世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2021年10月19日

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 エコノミスト誌10月9日号の記事‘Pakistan got its way in Afghanistan. Now what?’は、アフガニスタンでタリバンが権力に復帰したことはパキスタンにとって勝利であるが、今後パキスタンでイスラム過激派が勢力を伸張させる可能性、深まる中国依存など、パキスタンの先行きは不透明であることを解説する記事を書いている。

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 この記事が問いかけているのは、タリバンを支援するというパキスタンの戦略的な賭けは報われるのか、それともパキスタンはイスラム過激主義の破壊的な波浪に見舞われるのか、ということである。

 何をもって報われると言うのか明確ではないが、米国がタリバンと戦っていた間は、パキスタンはその表裏ある言行に偽装された有用性を主張出来た。しかし、タリバンの勝利と共にタリバンとの関係は公然のものとなり、異様なタリバン政権と結ぶパキスタンの異様な様は、西側諸国に強く疎外されるリスクを冒すものと言えよう。

 そうではあるが、タリバンの権力奪取は、かねて米国のテロとの戦いに批判的で、これにパキスタンが巻き込まれたのは間違いだとしていたイムラン・カーンにとって勝利であるに違いない。タリバンのカブール制圧の翌日、アフガン国民は「奴隷の鎖を断ち切った」と彼は述べた。

 インドに対する上でアフガニスタンに友好的な政権を持ち、背後に「戦略的縦深性」を確保することを至上命題とし、タリバンを陰に陽に支援して来たパキスタンの軍にとっても勝利であることは間違いない。

 タリバンに正統性の衣を与えようとするイムラン・カーンの外交攻勢は以上の事情に照らせば必然的なものであろう。9月25日の国連演説で、彼は米国のためにパキスタンが犠牲に供されたと非難するとともに、アフガニスタンが混乱しテロの温床となることを防ぐには安定化のためにタリバンを支援することが唯一の道だと強調した。しかし、タリバンによる冷酷な支配の復活が憂慮されている状況では説得力を欠くと言わざるを得まい。

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