2024年4月20日(土)

新しい原点回帰

2022年1月15日

 柳澤管楽器がある東京・板橋は、もともとは軍需工場が多く集まる場所だったが、今ではすっかり住宅街になった。木造の住宅を改造して作業場にしているが、規模の拡大と共に周辺の木造住宅が柳澤管楽器の工場に変わっていった。本社周辺に行くと、YANAGISAWAの文字が入った作業シャツを着た従業員が、部品を次の作業場へと運んだり、完成した楽器を車に積み込んだりしている姿に出会う。

 真鍮(しんちゅう)などの板材から細かい部品を作る工程などでは機械が活躍しているが、楽器の本体を作るのに板材を円筒状にして曲げたり、穴を開ける作業はすべて手作業。部品を本体に取り付けていく根気のいる作業も従業員一人ひとりが手でこなす。楽器に線で模様を彫るのも、もちろん手作業だ。工場と呼ぶよりも、作業場と言う方がふさわしい、手作り感満載の空間だ。

線で細やかな模様を描いていく

 そこで、分業して少しずつ楽器の形に仕上げていく。楽器が完成するまでに1カ月近くかかる。材料を調達する仕込みの段階から数えると半年近い時間が必要になる。「何しろ手間暇がかかる作業ですが、その手間を惜しんだら、絶対に良いものはできません」と柳澤社長は言う。

サクソフォン製作で、板材を円筒状にして曲げたり、穴を開けたり、部材を取り付けたりするのは手作業で行われる

世界で認められる品質

 今では、柳澤管楽器が作るサクソフォンは、世界でその品質が認められている。年間に製造する8000本近いサクソフォンのうち国内向けは3~4割で、海外向けが6~7割を占める。米国、フランス、英国、中国向けなどだ。

 生活水準の向上と共に、中国の楽器市場は急拡大してきた。柳澤管楽器が本格的に中国に目を向けたのは2012年。中国・上海で開かれた楽器の展示会「ミュージックチャイナ2012」に、日本貿易振興機構(ジェトロ)の支援を受けて参加した。日本では高度経済成長期の家庭にはピアノが一気に普及したが、同様にさらに人々の暮らしが豊かになり多様化を求めるようになると、サクソフォンなどの楽器にも目が向くようになる。それ以降、急速に柳澤管楽器のサクソフォンも中国に輸出されるようになった。


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