独自財源で行う「あったか食事パック」と支援金
写真は、2021年2月に発行された『みよし社協だより』の表紙に使われた。1月に2回目の緊急事態宣言が発令され、第3波がピークを迎えた時期に重なる。表紙には、次のメッセージが添えられている。
あったか食事パックとは、社協を訪れた相談者に1週間分の食料を提供するものである。小林さんが持っているのが、実際に提供された食料品である。三芳町社協は他の社協と異なり、特例貸付を原則として対面での申請とした。必要な支援策を提案するためには、郵送でのやり取りでは十分ではないと考えたのである。そして、特例貸付の相談に訪れた人には、あったか食事パックを手渡した。
驚くべきことに、あったか食事パックに回数制限はない。食事にも事欠く家庭があれば、1度ではなく、2度、3度と提供することもある。なかには、週に1度、あったか食事パックを渡している例もあるという。提供回数の基準はどのように決めているのかという質問に対して、古賀さんは、「よくある質問です」と前置きをしたうえで、こう語った。
「誰に、何回、提供するのかは、現場の判断に任されています。私たちが一人ひとりの生活状況を聞き取ったうえで、必要な人に、必要なだけ支援する。社協の上層部も理解し、応援してくれています」
それだけではない。特例貸付は申請から結果がでるまでに、どうしても一定の期間がかかる。それまでの間の当座の生活費として、初回相談時に食料品とは別に5000円を手渡している。「相談に来てくれてありがとう」という感謝の気持ちを伝えたいからだという。
相談者のなかには、「こんなに優しくしてもらえたことはない」と涙する人、あまりに申し訳ないと貸付の相談に来たのに寄付を申し出た人もいた(寄付については丁重にお断りしたという)。
これらの支援は、三芳町社協が独自に創設した新型コロナウイルス対策緊急支援募金を財源としている。すべて寄付で集めたもので、取材時点では430万円ほどの寄付金が集まっていた。なぜ、小さな町社協がこれほどの寄付を集められたのか。その訳は後述することとし、まずはどのような人が相談に来たのかをみていこう。
どんな人が相談に来たのか
特例貸付の相談者に何らかの傾向はみられたのか。詳しい分析まではできていないが、と前置きしたうえで、「目立ったのは、女性と外国人」という答えが返ってきた。
相談に来た女性の多くは、非正規労働者であった。職種は多岐にわたる。ブティック店員、デザイナー、IT会社、建設など、今までの社協の支援ではあまり会うことがなかった人たちが多かったという。ダブルワークも珍しくなく、フリーランスで仕事をしつつ、夜は飲食店のアルバイトをして生計を維持していた人もいる。
コロナ禍でフリーランスの仕事がなくなり、飲食業も営業できなくなった。もともとの家計も火の車で、コロナ禍によっていよいよ生活が成り立たなくなったというケースが少なくない。