2024年4月18日(木)

都市vs地方 

2022年1月28日

 このレガタム繁栄指標の2021年版では日本のランキングは167カ国中19位であった。指標を構成する個別の項目を見ると、健康では、世界第1位のランキングを得ている。また、その他の項目(経済面など)についても、日本はいずれも1桁か悪くとも30位代にランキングされている。しかし、日本の「ソーシャル・キャピタル」に関するランキングだけは143位とかなり低くなっている。

地方はソーシャル・キャピタルが高く、都市は低い傾向

 世界における日本のソーシャル・キャピタルは、まだまだ改善の余地がある。では、日本国内の地域別のソーシャル・キャピタル状況はどのようになっているのであろうか。これにかかわる研究としては、滋賀大学・内閣府経済社会総合研究所 共同研究(2016)の「ソーシャル・キャピタルの豊かさを生かした地域活性化」があげられる。

 同研究では、全国の2万3883人の個人にアンケート調査を行い、その回答からソーシャル・キャピタルの構成要素として「つきあい・交流指数」「信頼指数」「社会参加指数」の3つの要素を集計し、ソーシャル・キャピタル統合指数を試算している。

 表2には、同研究報告書からソーシャル・キャピタルの統合指数が高いとされている上位5都道府県と低いとされた下位5都道府県を示している。これを見ると、最も指標が高いという計算結果となった福井県と最も指標が低いとなった北海道の間には8ポイント余りの差があることが分かる。そして、高いとされている地域はいずれも地方部の県であり、低いとされている都道府県は、いずれも政令指定都市を擁する地域である。

(出所)滋賀大学・内閣府経済社会総合研究所 共同研究(2016, p.108)の「図表3-3 都道府県別に見たSC」より筆者作成 (注)この指数はソーシャル・キャピタルの構成指標関連の質問に対して、肯定的な回答をした割合(%)を加重平均したもの 写真を拡大

 同報告書では、地域の人口増加率別にもソーシャル・キャピタル統合指標を集計し、ソーシャル・キャピタルは、「人口増加率が高い地域ほど低く、人口減少率が高い地域ほど高い傾向」にあると指摘している。地方部には地域の持続可能性に影響を及ぼすソーシャル・キャピタルが相対的に多く存在していることが分かる。

ソーシャル・キャピタルが及ぼす社会への影響

 ソーシャル・キャピタルの存在が、非市場的な日常生活へどの程度影響しているかを測るため、ここでは「孤独死」の比率を見てみる。地域にソーシャル・キャピタルが存在し、近隣との交流や信頼関係があれば、誰も知らぬ間に亡くなり事後に発見されるという孤独死は避けられると考えられるからだ。

 孤独死には法的な定義がなく、公式の統計値がないため、「立会人のいない死亡者数」で代用されている。この「立会人のいない死亡」は死亡時に立会人がおらず、死因が特定できないケースを指している。したがって、孤独死(立会人のいない死亡)であっても死亡原因が特定された場合は、該当しないので、数値の解釈には注意が必要である。

 図3は、国土交通省が出生や死亡をとりまとめる「人口動態統計」をもとに作成した、人口10万人当たりの「立会人のいない死亡」(孤独死)の状況である。

図3 人口10万人当たりの立会人のいない死亡(孤独死)
(出所)国土交通省の国土の長期展望専門委員会(第13回)配付資料「地方の豊かさについて」(2021.3.8)  写真を拡大

 東京都で圧倒的に孤独死(立会人のない死亡)の割合が高いことが分かる。全国平均値が1.75であるのに対し、首都圏や近畿圏で孤独死が比較的高い。また、表2でソーシャル・キャピタルが高いとされた福井県の孤独死はかなり小さいこともわかる。しかし、ソーシャル・キャピタル指数が小さいとされた北海道は、孤独死の割合が全国平均より低く、逆に高いとされた山形県では孤独死の割合が全国平均より高いという例外も見られる。


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