2022年9月28日(水)

教養としての中東情勢

2022年2月6日

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 バイデン米大統領は2月3日、米軍特殊部隊がシリア北西部で対テロ作戦を実施、イスラム国(IS)の指導者アブイブラヒム・ハシミ・クライシ氏が自爆死したと発表した。大統領らはホワイトハウスの状況作戦室で作戦を見守ったが、激しい銃撃戦の中、故障したヘリを爆破して退避するなど薄氷の作戦だった。ワシントン・ポストや中東専門誌などの情報から緊迫した作戦のもようを追った。

イスラム国(IS)の指導者クライシ氏が潜伏し、自爆した住宅(UPI/アフロ)

一般家庭も住む住宅に潜伏

 米軍や米情報機関は昨年12月までにクライシ氏がシリア北西部イドリブ県のトルコ国境から2キロメートルのところにあるアトメという町に潜伏しているのを突き止めた。潜伏先は3階建ての住宅で、クライシは妻と子どもとともに3階に居住、2階部分には信頼する側近家族が住んでいた。1階にはISとは全く関係のない一家の住まいになっていた。

 クライシ氏がいつから居住していたのかは不明だが、ISは2019年3月に北東部の最後の拠点を失っており、その前後から住んでいたとみられている。現場は同年10月にやはり米軍特殊部隊に殺害されたIS指導者バグダディ氏の潜伏先からわずか数キロメートルしか離れていないところだ。

 クライシ氏は祈りと入浴の際には屋上に姿を現していたが、人目を恐れてそれ以外は3階にこもり切りの生活だった。住宅の大家がクライシ氏らを何度かお茶に誘ったが断わられていたという。だが、先月のシリア・ハサカの刑務所襲撃などの大規模テロ攻撃はクライシ氏の指示の可能性が強く、IS残党勢力の頂点に立つ人物だった。

自爆されても巻き添えは少ないと判断

 バイデン大統領は12月20日、ホワイトハウスで安全保障の高官らと会談、その際、クライシ氏に対する作戦の選択肢を幾つか提示された。説明には建物の模型も用意された。目標は捕らえることだったが、会議の出席者らは殺害する以外手はないことがほぼ分かっていた。

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