世界と日本の水揚量を比較してみる
まず、世界全体と日本の水揚量推移の傾向を直視してください。恐らく社会科の先生でも、この大きな違いをご存知である方は、少ないのではないでしょうか? 1980年代と現在を比較すると世界全体では1億トンから2億トンへと倍増しているにもかかわらず、日本に関しては逆に3分の1に激減しているのです。
世界はこの現実を冷淡に評価しています。世界銀行は、08年に10年と30年の漁獲量を予想しました。そこでは、世界全体では23.6%と増加しているものの、一カ所だけ減少(マイナス9%)している海域があります。残念なことにそれが日本なのです。
さらに悪いことに、日本は15年で世界銀行が30年に予測していた数量まで下がってしまい、15年も前倒ししてしまいました。その他に世界食糧農業機関(FAO)が、13~15年の水揚げ量平均をもとに25年の各国の水揚げ量を予想しています。ここでも全体では17.4%の増加予想で、2桁の減少国など見当たらない中、日本はマイナス13.7%と突出して悪化が予想されています。対照的にノルウェーは18.9%の増加となっています。
漁獲量の減少理由を検証してみた
農林水産省のホームページに小学生との次のようなやり取りが掲載されています。
質問「漁獲量が減少している理由を教えてください」
回答の要約「漁獲量が減少している主な理由は、マイワシ漁の大幅な減少と遠洋漁業の減少」
この2つの理由はよく言われることなので、事実か検証してみましょう。
まず「マイワシの大幅な減少で日本の水揚げ量が減っている」という理由についてです。それが必ずしも正しくないことについては、下のグラフを見ていただければわかります。青の折れ線グラフがマイワシの漁獲量を含んだ推移で、赤がマイワシの推移です。そして緑が肝心のマイワシを除いた推移です。一目瞭然ですが、マイワシを除いても明らかに全体で減少が続いています。さらに言えば、逆に近年ではマイワシは全体の水揚げ量の減少を止める数少ない魚種なのです。