2024年7月16日(火)

家庭医の日常

2022年2月23日

 例えば、患者と禁煙の方法について相談する際に参考にしようと、日本で喫煙と関連した死亡が毎年どのぐらいあるのかをインターネットで調べてみる。最新と思われるデータは厚生労働省の「リスク要因別の関連死亡者数」で、2007年時点での推計で年間12万9000人となっている(その推計が含まれた論文が発表されたのは11年と12年である)。

 ただ、これはもう15年も前のデータであるし、よく読むと、この死亡者数は非感染性疾患による成人死亡に限られている。例えば喫煙に関連した肺炎(感染症)で死亡した場合は、この死亡者数に含まれていないのではないかと思われる。

 もう一つ、2008年に発表された論文を見つけた。ここでは喫煙と関連した死亡として肺炎によるものも含まれていたが、こちらは05年時点のデータで推計しており、さらに古い。そして結果は、年間19万6000人である。

 元になるデータと推計方法が異なるので結果が異なるのは仕方がない、とわかってはいても、約13万人と20万人とでは大きな差だ。患者はそれを聞いて、(口には出さないかもしれないけれど)「そんなことも定まっていないのですか」という印象を持つに違いない。

 経済協力開発機構(OECD)は、加盟国(現在38カ国)の国民の健康と保健医療制度の実績を示す重要な指標を収載して比較できる出版物『Health at a Glance』を隔年で出版している。最新版は21年刊行だ。

 この中に、喫煙にも関連する気管支喘息とCOPDの入院数を示すデータが掲載されているが、ほとんどの国が19年までのデータを提出しているのに(20年のデータを出している国もある)、日本のデータは何と09年までで、それ以後は掲載されていない(p.161)。このような状況では国際比較も成り立たず、最新のデータに基づいてケアの方法を考えようとしても困難である。

結構ある喫煙習慣の「再発」

「T.K.さん、こんにちは。1年ぶりですね。お元気でしたか」

「先生、こんにちは。お久しぶりです。何とか元気は元気だったんですが……タバコまた吸い始めちゃって……それでどうしようかと思って来てみたんです」

「そうですか、またタバコを吸う習慣に戻っちゃったんですね」

「はい」

「なるほど。それで、今はどんな気持ちですか。またタバコをやめてみようと思うのですか」

「はい。ちょっとバツが悪いんですけれど、何とかできないないかと……」

「素晴らしい! T.K.さん、よくまた受診してくれましたね! まだいろいろとやれることがありますよ。長期間の禁煙に成功して人たちも、実は数回どころか、5、6回もまた吸い始めてしまって、再挑戦を続けた人が多いんですよ」

「え、そうなんですか! 自分の意志が弱いからだと思ったけれど、みんな結構苦労しているんですね」

「はい、七転び八起きです。では、今日はまず、また吸い始めてしまった経緯というか状況と、ご家族の反応なんかもお聴きして、今後の作戦をご一緒に考えていきましょう」


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