電子タバコの最近の動向
まず、電子タバコが禁煙率を上げるというコンセンサスが生まれてきた。
ニコチンの入っているものは、ニコチン置換療法として利用しうるし、また、行動科学的なメカニズムも関係している可能性がある。ただ、紙巻きタバコを少しでも併用していると有害物質への曝露が続くことになり、まず完全に紙巻きタバコから電子タバコへ置き換えた上で、次の段階として電子タバコをやめていく必要がある。
電子タバコへの対応には、国によっても差がある。米国では、ガイドライン作成で有名な米国予防医療専門委員会(USPSTF)が、電子タバコの有益性と害のバランスを評価するにはまだエビデンスの集積が不十分としており、米国の主要な専門学会も同様の判断をしている。
英国では、政府が電子タバコの健康への影響について最新の臨床研究のエビデンスを一般に公開し、頻繁に更新を続けている(うらやましい!)。それを読むと、電子タバコが禁煙の方法として受け入れられつつあることが理解できる。
いずれにしても(たとえニコチンを含まなくても)電子タバコで蒸気を吸うことが健康へどのような影響を及ぼすのかについては、最新の研究結果でもまだ2年間の使用を検討しただけで、もっと長期にわたる影響についてはわからない。そのことは患者に理解してもらわなければならない。ここでも「不確実性に耐える」必要がある(『コロナワクチン3回目は接種した方が良いのか?』参照)。
再挑戦への明るい船出
相談の結果、T.K.さんはバレニクリンを試してみることなり、私の診察の後で看護師Cさんから今後のスケジュールについて説明を受けていった。さまざまな生活習慣の改善について笑顔で患者を励ましながら話を進めていくCさんは、多くの患者から人気がある。健康に向かっての行動へ踏み出す時に、それを心から応援する笑顔はとても大事だ。
その日の診療が終わった時にCさんが笑顔で尋ねてきた。
「先生、タバコチョコにも禁煙率を上げる効果があるんですか」
「え、どうしたの」
「T.K.さんが、奥さんからバレンタインデーにタバコチョコをもらったんですって。タバコ吸いたくなったらこれを食べてってことで」
「なるほど、微笑ましいね。T.K.さんが妊娠している奥さんのことを大事にしたからだよ。そのお返しだね。でもタバコチョコってまだ売っているんだ。確か僕の少年時代、昭和30年代ぐらいのものだよね。Cさんは知っているだろうけど」
「私はまだそんな年じゃないから知りませんよ! 父から聞いたことはあるけど」
屈託のないCさんの笑顔を見ていると、T.K.さんの禁煙再挑戦がうまくいきそうに思えてくる。