2023年12月6日(水)

バイデンのアメリカ

2022年3月9日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

 その結果、国内では市民生活の突然の劣化とともに、厭戦気分がじわじわと広がり始める一方、対外的には世界141カ国が露軍即時撤退を求める対露非難決議の支持に回るなど、プーチン大統領は事実上、孤立無援状態に追い込まれた。

狂気の軍事行動はどこまで行ってしまうのか

 こうした矢先、米ネットメディア「Axios」が去る2日、スクープ記事として報じたところによると、プーチン大統領は、ゼレンスキー大統領を標的とする暗殺団を首都キエフに潜入させ、凶行を試みたが、事前にウクライナ国防治安当局に察知され、計画は失敗に終わった。

 同国の「戦略コミュニケーション・センター」が発した電報情報で明らかになったもので、暗殺団はチェチェン人特殊部隊員で組織されていたが、犯行前に全員が殺害された。また、この殺害計画については、ロシアの秘密情報機関「FSS」(KGBの後継組織)に所属する二重スパイから事前に情報提供があったという。

 ウクライナ政府当局は、同未遂事件に関連して、ロシア軍・情報機関内部には、プーチン大統領が仕掛けたウクライナ軍事作戦に異議を唱える分子が少なくないことを示すものだ、と説明している。

 プーチン大統領の精神状況についてさまざまな観測が広がり、孤立感を深める一方で、侵攻ロシア軍による一般市民を巻き添えにした無差別攻撃は、日を追うごとに激しさを増しつつある。

 核兵器による威嚇、原子力発電所攻撃と占拠、病院、学校、市場などに対する空爆……。まさに狂気の軍事行動は今後、どこまでエスカレートしていくのか、誰にもこの先は見通せない。

 すべては、「プーチンの心のありよう」いかんにかかっている。

   
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