都道府県別の子育て環境評価
ここまでは、ユニセフの国際評価に基づいて、日本の子育て政策のランキングを検討してきた。その中で明らかになったことは、世界的な子育ての評価項目は「育児休暇」、「幼児教育(量と質)」、「子育て費用」があげられており、「制度上」利用可能であるか、と「実際に」利用されているかでは大きな違いがあるということである。
制度が実際に利用されているかどうかについては、特に父親の育児休暇の取得率で問題となる。そこで、日本国内の地域別に子育て政策を比較し、子育て環境において都市部と地方で違いがあるのかについて検討する。以下では、ユニセフ報告書の4項目と単に制度だけではなく実質的な基準に基づいて評価するという考え方のもとに指標化を行った。
(1) 育児休暇の取得
はじめに、子育て世代の育児休暇の取得状況についてみることとする。ここでは、5年おきに行われている調査の最新版『平成29年 就業構造基本調査』都道府県結果を用いて、25歳から34歳の育児をしている男性正規雇用者のうち、育児休業等制度の利用あり(育児休業、時短勤務、子の看護休暇、残業の免除・制限、その他)の比率を独自に試算した。
結果は表5に示されている。ここでは、利用率の高い都道府県8つと低い都道府県8つを抜粋して示した。
利用率の高い地域は地方部が多いように思われるが、千葉県、東京都もランクインしている。逆に利用率の低い地域にも地方部や京都府のような都市地域も含まれている。育児休暇取得の利用度には都市と地方での明確な傾向はみられないようである。
ただし、地域間の差異は大きく、トップの石川県が11%であるのに対し、利用率の低い京都府、福井県、栃木県ではいずれも2%台である。これらのことから、男性の育児休暇の利用に関しては、都市対地方というよりも、各地域別の問題=全国どの地域でも取り組まなければならない問題ということもできる。
(2) 保育施設の充実
次に、就学前の子どものケア・教育施設の問題として、保育所の施設的な整備状況を見ることとする。保育教諭の質的基準は原則として全国で同じであるため、ここでは量的な比較に焦点を当てるものとする。
ここでも形式的な保育所数よりも、「実質的に保育ニーズが満たされているか」という観点から、2020年『国勢調査』による0~4歳児のうち、1000人あたりの待機児童数(「保育所等利用待機児童数調査」)を算出して比較することとした。待機児童の少ない10地域と、待機児童の多い県10地域の結果は表6に示されている。
上位ベスト10まではいずれも待機児童は0であると報告されている。ちなみに第11位は新潟県で0.04/1000人である。待機児童がゼロの県はいずれも地方部であり、待機児童の高い地域には政令指定都市の存在する宮城県、東京都、福岡県、岡山県、兵庫県が含まれ、都市部において保育施設の不足傾向が見て取れる。
待機児童の観点からすれば、地方部の方がやや状況は良いように見受けられる。ただし、滋賀県と沖縄県は0~4歳児数対比の待機児童が多く、また保育施設の利用は女性の就業率とかかわるため、地方部が必ず有利と言えるわけではない。