2024年4月25日(木)

都市vs地方 

2022年3月24日

(3) 保育料の比較

 最後に、保育料の比較を行う。保育料については、19年10月より「幼児教育・保育の無償化」政策により、相当の負担軽減がなされている。具体的には幼稚園、保育所、認定こども園などを利用する3歳から5歳児クラスの子供たち全てと、 住民税非課税世帯の0歳から2歳児クラスまでの子供たちの利用料が無料とされている。したがって、住民税が課税される世帯の0歳から2歳児については保育料負担が存在する。

 そこで、「小売物価統計調査(動向編)」から22年2月時点の全国の県庁所在地での保育料(2歳児、年額)の金額を比較することとした。保育料は実際にかかるコスト=公的補助で定まるため、「小売物価統計調査」によって親の負担する実際の費用を知ることができる。

(出所)「小売物価統計調査(動向編)」の2022年2月時点の全国の県庁所在地での保育料(2歳児、年額)を基に筆者作成

 表7を見ると、東京23区が25万5000円あまりと最も親の負担額が小さくなっている。これは東京の物価水準を考慮に入れれば、かなり低額と評価できるのではないだろうか。しかし、2位以下は比較的地方圏の地域であり、逆に東京と比べて10万円以上年額保育料が高い地域に横浜市や京都市が含まれていることをみると、全体として地方圏で保育料は低廉に設定されているといえる。ただし、地方の世帯の収入や子ども数を加味して、世帯の所得に対する負担能力の評価も別途必要である。

全国的な子育て環境の充実が急務

 都市と地方で地域別に子育て環境を比較した結果、待機児童と保育料という施設での子育て(Formal care)政策に関しては、東京23区の保育料をのぞいて地方の方がやや恵まれている傾向見られた。これに対して、家庭内での子育て(Informal care)にあたる男性の育児休暇等の制度利用率は、地域的な明確な傾向はなく、日本国全体でワークライフバランスをとる政策が必要であることを示唆している。

 ユニセフの報告書では、「日本と韓国は最も長い父親の親の育児休暇が用意されているが、当初はこの制度を利用した父親はほとんどいない」と指摘されている。育児政策の評価は、制度を整えただけでは不十分であり、「仏作って魂入れず」とならぬよう、実質的な子育て環境の充実が必要である。本シリーズの「対立か共生か 地方VS東京圏」「都市圏大学への立地・定員の介入は地方のためになるか」で指摘したように、都市部に移動する人々の少なからぬ割合が地方部で生まれ育った人であることも忘れてはならない。

   
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