主流は価格が安定しているテザーコイン
中国人両替商が主に扱う仮想通貨は、テザー(USDT)あるいはビットコイン(BTC)である。中でもテザーは、Tether Limited社が運営するペッグ通貨であり、ステーブルコインであることから、テザーが好んで用いられている。
ペッグ通貨とは、ドルや円などの別の法定通貨と暗号通貨(仮想通貨)を連動させることを目的として作られた仮想通貨のことを指す。テザーは米ドルと連動する暗号通貨であり、価格変動しにくく、価格が安定しているステーブルコイン(価格安定型通貨)として位置付けられている。
図1は、トロンスキャン(ToronScan)というサイトに示された、ブロックチェーン上で生成されたテザーの総供給量(Circulating Supply)を表すグラフで、ロシアのウクライナ侵攻以降、テザーは順調に増加していることがわかる。
中国外交官の「役得」
中国人両替商の現金は、主に中国の外交官によって補充されている。例えば現金が不足してくると、仮想通貨を豪州のカジノにネット送金し、カジノ事業者は、この仮想通貨を豪ドルに交換して、中国の外交官に渡すのだ。
外交官は特権があり、空港の税関でも荷物をチェックされないことから大量の現金をいくらでも持ち出すことができる。頻繁に入出国を繰り返している外交官もいるのが実態だ。
これらの外交官の行為は中国共産党の指示というよりも、両替商との個人的付き合いで行われており、いわば外交官の「役得」として行われている。今回のロシアによるウクライナ侵攻が中国の外国官に特需をもたらしたともいえるのである。