2024年11月22日(金)

デジタル時代の経営・安全保障学

2022年4月6日

 中国の両替商の歴史は中国共産党の歴史よりも遥かに長い。中国の両替商は長年にわたり、ロシアだけではなく、北朝鮮や南米、アフリカ諸国で活発な地下経済を支えているのだ。

決済が一巡した後はペッグ通貨が主軸通貨に

 こうした中国人両替商の商いもいつまでも続かないようである。現時点での貿易にともなう決済が一巡した後も西側諸国による経済封鎖が続くようであれば、ロシアと中国や近隣諸国との貿易は、テザーや金の価格と連動するテザーゴールド(XAUT)やPAX Gold(PAXG)のようなペッグ通貨での決済が主流になるのではないかと想像する。

 テザーには近い将来、スマートコントラクトを実装することがホワイトペーパーに記載されていることから、仲介手数料が不要になることもその根拠だ。スマートコントラクトとは、仮想通貨の取引の発生から契約、決済までを自動化する仕組みで、スマートコントラクトが実装されると第三者の仲介抜きで仮想通貨の決済が行われることから、第三者へ支払う仲介手数料がいらなくなるといわれている。

 ステーブルコインを使った取引は、価格も安定し、銀行手数料より安く、便利で、しかも将来的には仲介手数料も不要になることから、貿易決済の主流になる可能性がある。一方、ロシア国民は、もともとルーブルの価値の安定性に不信感を持っており、銀行預金の21%程度を外貨預金で保有している。銀行が外貨不足に陥る懸念が高まると、保有する外貨を引き出す動きが活発化する。そうした預金がステーブルコインに流れても何の不思議もないのである。

 西側で生まれた仮想通貨が西側諸国の経済制裁によって、東側諸国の仮想通貨の普及に勢いをつけたことは皮肉である。

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