中国ベンチャーの黄金時代も
今は昔か……
2010年代は中国ベンチャーの黄金時代だったとされる。モバイル・インターネットという新たなテクノロジー・トレンドに加え、中国ベンチャーキャピタルの整備が急速に進み、起業しやすい環境が整った。動画アプリTikTokを生み出したバイトダンスなどのグローバル企業が誕生するほど活況を呈した。
中国のエリートの多くは海外、特に米国に留学している。以前ならば米国で起業していたであろうエリートたちも、大陸にチャンスを見出して帰国する例が増えた。例えばソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資したAI創薬ソリューションのXtalPi(エクスタルパイ)は15年の設立だ。創業者はみなバイオテックの先進地であるボストンの大学研究者だったが、中国ベンチャーマネーを求めて広東省深圳市を本拠地とする中国企業として起業する道を選んだ。「あえて中国企業になる」、そのメリットが目立った時代から、今や「中国企業であるリスク」が目立つようになってきた。
「中国企業というレッテル」が世界で戦うための重荷となる──。20年も前にこのリスクに気付いていた人物がいる。それがファーウェイの創業者、任正非(レン・ジェンフェイ)だ。03年、ドットコム・バブル崩壊の余波で経営不振に陥った同社は、米通信大手モトローラへの身売りが進められていたが、土壇場で破談となった。後に任は身売りには真の目的があったと明かしている。通信機器事業を発展させれば、将来必ず米国と争うことになると察し、「あえて米国の帽子をかぶりつつ、働くのは中国人」という道を模索したのだ、と。
まさにその予測は的中した。中国という高成長する巨大市場を苗床に繁栄を謳歌してきた中国企業だが、今、強い逆風にさらされている。
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