2023年1月27日(金)

#財政危機と闘います

2022年6月1日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

関東学院大学経済学部教授

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。

日本財政は社会保障と「開戦前夜」

 しかし、こうした「防衛費増額ありき」の風潮に抗うためか、財務省は、防衛費は国の経済力を表すGDPではなく、政府の安定的な収入である税収との対比で考えるべきとの見解を示した上で、税収比で見れば日本の防衛費は他国とそん色のないものだと主張している。

 こうした財務省の主張は、日本財政が財政法上発行を認めていない赤字国債で税収不足を賄うという非常事態を50年近く続けているのだから、税収比でみれば日本の防衛費が大きくなるのは考えるまでもなく当然と言えば当然である。

 したがって、財務省の問題提起の核心は、日本の防衛費は諸外国に比べても小さいわけではないのだから増額する必要はないというのではなく、結局、防衛費増額は日本周辺の国際事情を勘案すれば避けては通れないものだと渋々ながらに認めつつも、安定財源をどう確保するのか、という点に集約できる。

 このような財務省の「安定財源確保」の懸念は防衛費増額を主張する政治家はもとより、われわれ一般国民も真剣に耳を傾ける必要がある。

 なぜなら、日本財政はいまや予算総額(107.6兆円)の3分の1を超える社会保障(36.3兆円)をいかに工面するかに四苦八苦な状況であり、しかも社会保障目的税と位置付けられる消費税収(21.6兆円)だけでは社会保障関係予算を賄い切れていない額に対して赤字国債(14.7兆円)を発行している状況である。社会保障費とそれが生み出す財政赤字を合計すると、実に予算総額の46.7%を占めている。

 これは、太平洋戦争開戦前夜の1940年予算で、国防予算が予算全体の50%強あった当時に現在の社会保障予算が匹敵している状況といえ、まさに社会保障との「開戦前夜」に他ならない。こうした状況の中、安定財源もなく防衛費を増やす余裕はないという財務省の立場も理解できるだろう。

 そもそも、今回のロシアのウクライナ侵略を見るまでもなく、防衛する側にとっても財政負担は半端なく、常時から税源に裏打ちされた安定財源ではなく赤字国債に頼っていては、いざ有事の際に日本財政はしっかり機能するはずもない。

一国の防衛力は防衛費だけでは決まらない

 ただし、一国の防衛力は必ずしも防衛費やそのGDP比の多寡、税収比の大小で決まるものではない。

 大事なのは、仮想敵国の軍事力を客観的に見極め、その上でさまざまな侵略プランを想定し、軍事同盟の構築を含めてそうした危機にいかにして効果的に対応していくかという防衛戦略を示し、それを実現するためにはどういう戦術が必要で、人員・装備・システム・戦略物資の備蓄等々総合的な戦力がどの程度必要かを算定し、調達の道筋をつけることである。


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