2023年2月8日(水)

#財政危機と闘います

2022年6月1日

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島澤 諭 (しまさわ・まなぶ)

関東学院大学経済学部教授

富山県生まれ。1994年東京大学経済学部卒業 同年4月経済企画庁入庁。調査局内国調査第一課、総合計画局計量班、調査局国際経済第一課等を経て2001年内閣府退官。02年秋田経済法科大学経済学部専任講師、04年10月秋田大学教育文化学部准教授。15年4月から中部圏社会経済研究所研究部長を経て、22年4月より現職。

 したがって、達成すべき防衛費の水準やGDP比、購入すべき装備品があらかじめ決まっているのではなく、日本を防衛するのに十分な戦略に応じて、それに必要な防衛費が10兆円であれば10兆円の予算を付けるのが筋であろう。5兆円のままで大丈夫ならいまのままでもよいはずであり、GDP比1%だから足りないとか2%だから大丈夫とか言う議論では本来ないはずなのだ。

 間違っても中間選挙を前にして一向に支持率が伸びないバイデン大統領に「防衛費の相当な増額」を手土産とし、米国からの高額な装備品購入のための防衛予算増額としてはならない。

金額や装備ありきでない議論を

 ロシアのウクライナ侵略の行方次第では、欧米や日本、豪州等自由主義諸国と、中国、ロシア、北朝鮮等権威主義諸国がかつての自由主義対共産主義の時代のように世界が二分される可能性がある。そうすれば、世界経済は冷え込んだまま、日本は権威主義的・拡張主義的諸国との対立の最前線に立つことになる。

 こうした権威主義的国家群は、日本が現在のような放漫財政を続けることで財政危機に陥ったとして、情けをかけて侵略を思い止まる訳もなく、かえって好機と見て一斉に攻め入ってくるのは間違いない。その時に政治的妥結といっても逆に足元を見透かされ、無条件降伏を強いられるだけだ。目に見える抑止力=軍事力と目に見えない抑止力=経済・財政力の強化が喫緊の課題である。

 つまり、国家防衛は軍事力だけでなく、それを支える経済・財政力が車の両輪であり、防衛力の適正化と同時に財政の適正化も併せて行うのが当然である。安定財源を示さず防衛力の強化だけを声高に主張するのでは愛国者失格であり、真の愛国者とは呼べない。

 他国に日本の国土を蹂躙されたり、国民が虐殺されるのを防ぐため、いかにして効率的に適切な防衛力・防衛体制を整備していくのか、財政の健全化も見据えつつ、必要であれば増税による恒久財源の確保も政治の責任において実現する強い覚悟を持って、金額や装備品ありきではない真剣な議論が望まれる。

  
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