そして74年3月に志村がいよいよ新メンバーとして紹介される。最初こそ何をやってもウケずに苦しんだものの、その後、加藤から主役の座を奪い、志村がドリフを牽引してゆくことになるのは、多くの人が知るところである。
令和にも刻まれるドリフの足跡
本書で印象的なのは演劇研究者としての著者がその視点でドリフターズを分析している箇所である。
最高視聴率が五〇%を超えた『全員集合』は、同時代のあらゆる地域、年齢、階層を超えて、数千万人の日本人が視聴していたことになる。また、週休二日制になる前の土曜八時は、多くの家庭にとって、一週間の労働を終えた後の、余暇のはじまりの時間だ。一九七〇年代において、多くの国民は毎週同じ時間に同じ娯楽を共有していた。それは、演劇の近代が夢見た理想、その一部が実現したということではないか。
『全員集合』は85年9月に最終回を迎えたが、16年間で803回にわたった放送の中で、平均視聴率が27%を超え、テレビ史に残る金字塔を打ち立てた。ドリフはその後も活動を続け、いかりやと志村の「確執」など、メンバーの人間関係も含めて話題になった。
令和の時代になってもなおドリフの番組はたびたび放送され、注目を集めている。圧倒的な実績であり、国民で知らない人がいないほどの存在感と笑いの記憶をもたらした。そして日本のエンターテインメント界に大きな足跡を残したグループの実像に迫った本書も、演劇史の中のドリフに正当な評価を与えた力作として記憶されるだろう。