(2)消費税減税・廃止
国政選が行われるたび、野党は消費税減税や廃止を訴えてきたし、今回も同様であった。14年の第47回衆議院議員総選挙以来、野党は消費税減税・廃止を掲げながらも、一度も与党の議席数を上回っていない。
有権者の多くは、消費税が社会保障の安定的な財源として認知し、消費税減税や廃止を訴える野党の候補者より、よほど財政や社会保障制度の持続可能性について真摯に考え、投票していることが分かる。
野党は、消費税減税・廃止により、財政・社会保障制度の安定性を損ねる主張を続けるのではなく、多くの有権者、特に1973年から80年に生まれた人を中心とする「就職氷河期世代」が望む、財政や社会保障制度を再構築する改革案で、政党間競争を行うべきだったのではないだろうか。一体、野党は、度重なる敗北から何を学んでいたのか、疑問でならない。
自民党の大勝利を支えたのは若者世代
こうした自民党の大勝利は、21年10月に挙行された第49回衆議院議員総選挙と同様、若者世代によって支えられている。
明るい選挙推進協会「第49回衆議院議員総選挙全国意識調査」(22年3月)によれば、世代別投票先については、全世代で1位自民党、2位立憲民主党、3位日本維新の会である。1位自民党と2位立憲民主党との差は10代・20代で最大26.3ポイント、60代で最小の4.5ポイントであり、若者世代に大きく支持を受けている。
一方、今回の参院選に関しては、Abema TVの出口調査に基づけば、自民党がすべての世代で1位であるのは変わらないものの、2位については30代から60代までは立憲民主党に代わって日本維新の会、10代、20代では3位が日本維新の会に代わって国民民主党がランクインする結果となっている。特に、10代では28.8ポイントもの差をつけて2位の立憲民主党を大きく引き離していることが分かる。
つまり、自民党の躍進を支えたのは若者世代である。
実は自民党が若者の支持層を獲得したのは、まさに今回テロ事件に倒れた安倍元首相の功績である。アベノミクスによりそれまで停滞していた若者の雇用を大きく改善した結果であった。安倍内閣から菅義偉内閣、岸田内閣と替わっても、安倍元首相の遺産は生きていたということになるだろう。
岸田内閣は国民の負託にこたえられるか
今回の参院選では、自民党の一人勝ちともいえる状況になり、これまでは「何もやってない」と揶揄される岸田首相も独自色を発揮し、強いリーダーシップによって、課題解決に取り組める基盤が整ったはずだ。
参院選で示された岸田内閣、自民党に対する国民の大きな負託にこたえ、そして志半ばで凶弾に倒れた安倍元首相の遺志を継ぐためにも、コロナ禍、物価高、円安、財政再建、社会保障制度改革など山積する日本の課題に解決のめどをつけて欲しい。