2024年7月16日(火)

WEDGE REPORT

2022年7月13日

 人間は、我慢すればするほど、対象への気持ちが大きくなる傾向もあり、新型コロナによる渡航制限が日本への思いを加速させた。日本に行けないのならと、前述の店で日本を感じようとしており、多くの店で大勢の香港人が来店する状況だった。

 先日、筆者は香港にある吉野家で昼食を取ろうとしたところ、長蛇の列ができており、諦めて近くのローカルレストランに入った。香港の吉野家は1991年に進出と長い歴史がありすっかり定着しているため、普段は長時間並ぶことはないイメージだっただけに筆者も面を食らった。

数十万円払い隔離されても日本に行きたい香港人

 こうした香港人の〝日本熱〟は制限が解除されようとしている観光でも爆発しようとしている。日本政府は6月10日から外国人観光客の受け入れを再開。香港への渡航では03年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の経験や中国本土の「ゼロコロナ政策」の影響で最大21日間の政府指定ホテルでの隔離を義務付けていたが、重症化しにくいオミクロン株の特性と世界とのビジネスのつながりから1週間に短縮されている。

 「日本での隔離なしで、香港で1週間の隔離ならば、日本に旅行したいという香港人が現れた」。日本旅行に大きな強みを持つ香港大手の旅行代理店、東瀛遊旅行社(EGL Tours)の袁文英主席兼執行董事は、香港での活況を実感している。新型コロナが蔓延する前は、香港の人口の約3分の1近い220万人が日本を訪れており、訪日観光への需要は見込まれていた。

日本語も堪能な袁文英主席

 袁主席は日本語が堪能で、18年には旭日双光章を受賞するなど香港と日本を結ぶ大きな役割を果たしてきた。「6月22日出発の6泊7日の日程で第1弾が香港から日本に向かった。5月26日に日本政府が外国からの渡航緩和を発表し、翌27日にパッケージツアーを販売した」という。

 日本政府の発表翌日に発売? と疑問に思うだろうが、同社の日本団体部の梁子耀(ケンタ・リョウ)シニア・マネージャーは「日本のバス会社や観光地などとは日頃から連絡を取り合っており、旅行が解禁されたらすぐ行動がとれるようにしていました」と準備だけは怠らないようにしていた。実際、緩和発表後すぐ日本に電話してOKをもらうだけだったそうで、受入側としても観光客が来るということを喜ばれている。

 団体旅行第1弾は、北海道5泊、東京2泊というツアーで、1万9999香港ドル(約34万6000円)からという価格帯。「東京に何度も訪れている香港人が多いので、東京だけのツアーではニーズは満たされない。ラベンダーがきれいな時期だったので北海道のツアーをメインにした」と袁主席は述べる。

 初回のツアーは10人の観光客と1人の添乗員が日本に向かったという。観光バス1台に何人乗れるなどの細かい概要が緩和3日前の6月7日に明らかになったことや、ビザ申請の詳細も遅れて判明したこともあり、参加者側がビザ申請の時間的余裕があまりなかったという。もう少し、時間的な余裕があれば参加者は増えていたそうだ。


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