さらに本書は法科大学院や司法修習の課題も指摘する。
法科大学院は、法曹を養成する機関であるため、学生を法曹にさせる、すなわち司法試験に合格させることは重要なミッションであるはずだ。この意識が低い教員が少なくないことを、筆者らは色々な法科大学院出身の弁護士仲間から聞いてきた。(中略)実務を教える中で、学生を司法試験合格レベルに到達させるというのが「理論と実務の架橋」の一つの意義ではないだろうか。その点をはき違えた授業が多い法科大学院は、学生にそっぽを向かれてしまうだろう。
社会変化の中で弁護士のニーズやあり方も変わる
厳しい指摘もあるが、その底流にあるのは司法を市民に近づけたいという思いであろう。世の中ではさまざまな争いやトラブルが毎日のように起きている。そこには必ずと言っていいほど法務ニーズが存在する。
専門家に頼んで円滑な問題解決を図りたいと願う人々や企業は今後増えこそすれ、減ることはないだろう。そのためにも、気軽に相談できる十分な数の弁護士がいなければならないのは明白だ。同時に、担い手となる弁護士が適正な報酬を得て、食べていけるシステム作りも重要である。
社会の変化で、旧来型の弁護士では対応できない分野も生まれている。新たな感覚を持つ若い世代が増えれば、弁護士の仕事の質も変わってゆくはずだ。本書は社会のインフラとしての弁護士の戦略的な養成と機能強化を考えるきっかけになるだろう。