2024年12月12日(木)

オトナの教養 週末の一冊

2022年7月22日

 弁護士のいまをリアルに切り取った本である。世の中の多くの人々は弁護士にどんなイメージを持っておられるだろうか。仕事で日常的に接している人は別だが、豪腕かつスマートに企業の買収・合併を繰り返すビジネスローヤー、あるいは社会の中で困っている人を助ける人権派弁護士、離婚問題や相続問題などを扱う街の弁護士だろうか。

(kuppa_rock/gettyimages)

 最近は企業に属して法務案件を扱うインハウスローヤーや、学校関係の諸問題を扱うスクールローヤーなど新たな分野も生まれている。時代や環境の変化に応じて弁護士の仕事は変化しているが、本書『弁護士のすゝめ』(民事法研究会)はその仕事の最前線を紹介する。

弁護士「食えないキャンペーン」の弊害

 ひところ弁護士になっても食べていけないという話題が取りざたされた時期があった。弁護士が就職難で、満足な収入を得られないという論調だった。

 筆者は当時、さほど重く考えなかったが、実はこの影響が今も少なからず尾を引いている。司法試験の志願者が減り、弁護士になろうとする人たちが減少したというのである。

 これに対して著者はこう主張する

 弁護士も一つの職業であり、仕事で生計を立てなければいけないから、食える、食えないは大事なことだ。ただ、筆者らは断言するが、弁護士という仕事で食えないことはおよそない。(中略) 努力や才能でいかようにでも稼げるのだから夢のある仕事だ。
 ただ、稼げる、稼げないということ以上に重要なことがある。それは、弁護士というプロフェッションゆえの魅力だ。弁護士という仕事は、社会から頼りにされ、世の中のため、人のためにダイレクトに役立つことができ、しかもある程度は稼げる(才覚があればものすごく稼げる)。

 司法試験の現状を見てみると、2021年度の司法試験の合格者は1421人で、前年度に1500人を割り込んだ。文系最高峰の試験で狭き門ではあるが、かつては2102人(12年度)まで増えた合格者が、ここ10年ほどは減少傾向が続いている。これは受験者が減り、ひいては出願者が減っていることにほかならない。

  著者は「食えないキャンペーン」があったことにも言及する。これは10~12年前に、司法試験合格者が十分な収入を得られず、経済的に困窮する姿をテレビが大々的にとりあげていた頃の話だ。


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