日本も例外ではない中国IT製品の氾濫と技術の流出
中国製IT製品に深刻に危機感を持っていないのは、日本も同じだろう。ファーウェイ製品などの排除も一時期話題にはなったが、今もテレビではファーウェイ製のスマホートフォンなどの広告を見かけるし、Wi-Fiの接続ルーターや基地局など、まったく排除される気配はない。
19年4月に出された政府の情報通信機器の調達に関する運用指針も「特定の企業、機器を排除することを目的としたものではない」と弱腰だ。政府がこの調子だから、なおさら民間企業に危機感を持てというのは無理がある。米国が国防権限法に基づいてファーウェイなどを名指しで排除したのとは大違いである。
中国の脅威は、サイバー攻撃だけではない。習近平直轄の全国情報安全標準化技術委員会(TC260)が4月に公表した「情報セキュリティ技術オフィス設備安全規範(草案 2022年4月16日)」で、オフィス設備の安全評価について「国内で設計・生産が完成されていることを証明できるかどうかを検査する」と規定するなど日本の技術を盗用しようとしているのは明らかだ。
最近、特にファーウェイは、日本の研究者や技術者の獲得に熱心だ。ファーウェイは自動車分野に力を入れており、特に電動化の要となる車載パワー半導体に関する日本人技術者を大量に集めている。日本の大手自動車メーカーでパワー半導体の研究開発を主導してきたベテラン技術者が、高額の報酬で引き抜かれている。
パワー半導体は、半導体市場を失った日本が唯一、起死回生をはかれる市場であるが、ハイブリッド車で培った自動車の電動化技術が、やすやすと中国に持っていかれているのだ。経済安全保障の名のもとに「物」、「国家標準」、「人」などあらゆる面で戦略的に日本を攻略してくる中国に対して、早期に手を打つ必要がある。
今回のサイバー攻撃はストレステストだとし、警戒を強める台湾。その時が来て、はじめて気づく日本。茹でガエルの例えは、ごめんだ。
安全保障と言えば、真っ先に「軍事」を思い浮かべる人が多いであろう。だが本来は「国を守る」という考え方で、想定し得るさまざまな脅威にいかに対峙するかを指す。日本人が長年抱いてきた「安全保障観」を、今、見つめ直してみよう。
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