米国では現在、再評価が行われており、20年には、環境保護庁(EPA)が5成分の中間評価案を公表。ハチとの関係については、花を咲かせる作物への使用期間を制限しハチへの影響を最小限にすることや、対象害虫に効果的に用いてそのほかの生物等には極力影響を及ぼさないように使うことなどを示しました。
ヒトの健康影響やハチ、その他の生物への影響等含めた総合的な中間評価は、22年末までに公表される予定です。
ちなみに、米国では商用的に飼われているミツバチの数は減っていないと現在は報道されています。
日本では、CCDは確認されず
一方、日本ではEUほどの強い措置は講じられていません。
まず08年、日本でもセイヨウミツバチが不足する現象が起き、CCD発生との報道も目立ちました。しかし、日本ではCCDは確認されていません。
このあたりが厄介でわかりにくいところなのですが、もともと、日本にいる在来ミツバチはニホンミツバチで、産業利用はほとんどされていません。ハチミツ生産やイチゴなどの授粉に働いているのはセイヨウミツバチ。外来種であり、法的には「家畜」と位置付けられています。日本で飼育増殖されているほか、豪州などから大量に輸入されています。
この年は、豪州が輸出をストップしたため、日本でもセイヨウミツバチが足りなくなりました。その現象が「日本でも不足! CCDか?」と誤解されたようです。
「セイヨウミツバチが巣箱の近くで大量死している。CCDに違いない」という一部の養蜂家の告発はありました。しかし、ミツバチの寿命は1カ月〜1カ月半程度。巣箱周辺で死んだ個体が見られるのは普通のことです。その数が異常か通常かの判断は難しく、ほかの養蜂家やハチの科学者は「うかつな判断はできない」という姿勢でした。農水省等の研究費により調査研究が行われましたが結局、CCDとは判断されませんでした。
ネオニコの使い方の注意が強化された
こうした調査と並行して、現場では対策が進みました。
それまでは、田んぼにはミツバチは行かない、とされていたのですが、田んぼにも行っていることもわかりました。稲作では、カメムシ防除のためにネオニコが使われます。そこで、稲作農家と養蜂家が連絡し合うようになりました。
使用する際には養蜂家が巣箱をその近辺から退避させます。ネオニコの使用直前から一定期間、巣箱を近くから退避させる、というのは一見、原始的な方法でしたが、効果は高いそうです。
また、液状の殺虫剤散布ではなく粒状の製品を用いて成分がミツバチに極力かからないようにするなどの方法もとられました。
もちろん、ネオニコが使われ作物に浸透して花粉や花蜜に移行し、それをミツバチが集めて巣箱へ、というルートは残るため、ミツバチへの影響はゼロとはなりません。以降も、年間50件程度の被害報告が農水省へ寄せられています。