2024年11月21日(木)

食の安全 常識・非常識

2022年8月9日

 ちなみに、ホームセンターに並んでいる家庭用のスプレー式の農薬にもネオニコが入っているものが数多くあります。一度シュッとすると長く効くので、趣味のガーデナーにとっても便利なのです。

 ただし、7つのネオニコのうちの5つは、従来の有機リン系殺虫剤に比べてミツバチへの毒性が強いことが当初からわかっていました。そのため、これらについては日本では容器に、「ミツバチの巣箱の近くでは使わないようにする」などの注意喚起が表示されていました。

 まとめて言えば、「ネオニコは、ヒトへの影響は従来殺虫剤よりかなり小さく、使い勝手もよい。しかし、一部のネオニコはミツバチへの影響がかなり大きい」という困った性質を持っていたのです。

EUが2013年、使用制限を開始

 ところが、2006年ごろから、欧米でミツバチが突然いなくなる「蜂群崩壊症候群」(CCD)が問題となりはじめました。ハチなど花から花へ飛び授粉するポリネーターは、作物生産に大きく貢献しています。そのため危機感が高まり、ネオニコが問題視されるようになりました。

 そして13年、EUが大きく動きました。当時、EUは5成分(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム、アセタミプリド、チアクロプリド)の使用を認めていましたが、3つのネオニコ成分(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)を使用するとハチ(ミツバチや野生のハナバチ)に被害が出る可能性がある、として、使用を制限したのです。

 具体的には種子をネオニコでコーティングして殺虫効果を持たせる方法などはハチへの影響が大きいとして、禁止しました。さらに18年には、3成分の屋外での使用を禁じました。ただし、ガラスなどで作られたグリーンハウス内では、ハチへの影響がないことから使用可能です。

 また、EUはヒトに対するリスク評価も厳しくしました。13年、イミダクロプリドとアセタミプリドの2成分について、ADIとARfDの引き下げを行ったのです。現行だと発達神経毒性に関して十分な安全圏にあるとは言えないので引き下げる、との判断でした。

 イミダクロプリドは、ADIが0.06ミリグラム(mg)/キログラム(kg)体重/日で、これまでの数字を維持。農薬使用者許容暴露許容量(AOEL)とARfDが0.08mg/kg体重/日だったのを、ADIと同じ0.06 mg/kg体重/日に引き下げ。アセタミプリドは、ADIとAOELが0.07 mg/kg体重、ARfDが0.1 mg/kg体重/日だったのをすべて、0.025mg/kg体重/日に引き下げました。

 さらに、農薬として認めていた5成分のうちチアクロプリドについては20年、地下水汚染の懸念等から承認取り消しとしました。アセタミプリドについては、ハチに対してのリスクは低いと判断しており、使用禁止や従来に上乗せした使用規制はかけていません。

 EUでは、ネオニコの次の再評価は33年までに行われることになっています。

米国も再評価中

 米国ではイミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、ジノテフラン、アセタミプリドという5成分を含む製品が用いられています。15年には、イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム、ジノテフランの4種類に対し、新たな使用方法は承認しないことを公表しました。19年には、種子コーティング用などの12製品をキャンセルしました。


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