失敗を徹底的に検証し
次のチャレンジに生かせ
22年度、国交省の「スマートシティモデルプロジェクト」に4.2億円、総務省の「地域課題解決のためのスマートシティ推進事業」に4.6億円、内閣府の「スーパーシティ構想推進事業」に10.1億円など、他にも地域のデジタル化に向けて国は多くの予算を確保している。国の助成を受けるために自治体が躍起する構図も見えてきた。ある自治体職員は「一度採択されるとその後も補助を受けやすいと聞き、目先の補助金交付を目的に国のプロジェクトに応募した」と打ち明ける。
新しいチャレンジを苦手とする自治体が、補助金を原資に実証実験に取り組むこと自体は否定すべきではない。チャレンジは大いに結構だ。しかし、国も自治体も単なる実証で終わらせないようにトレースを徹底しなければ、補助金のバラマキに終わりかねない。
日本のIoTの第一人者であり、スマートシティに詳しい東京大学大学院工学研究科の森川博之教授は、次のように話す。
「日本には国家プロジェクトだから『失敗してはいけない』という風潮がある。国も自治体も実証実験で成果を挙げたかのように取り繕って報告したりさせたりしているのが現状だ。しかし、成功裡に終わるプロジェクトなどほとんどない。重要なのは、失敗と向き合い、なぜうまくいかないのかを徹底的に検証し、そこで得られた知見を次のチャレンジに生かすことだ」
資源が限られ、自然災害が多く、少子高齢化が進む課題先進国・日本。「日本型スマートシティ」の成功例を世界に示すことができれば、日本の存在感を高められるはずだ。そのためにも、改革を阻む行政の宿痾に向き合うことから始めるべきではないか。いつまでも「国家プロジェクト」と掲げるだけでは前に進まない。
コロナ禍を契機に社会のデジタルシフトが加速した。だが今や、その流れに取り残されつつあるのが行政だ。国の政策、デジタル庁、そして自治体のDXはどこに向かうべきか。デジタルが変える地域の未来。その具体的な〝絵〟を見せることが第一歩だ。