幼少期から「大きくなったら何になりたい?」の質問に、「動物のお医者さん!」と答える自分がいました。田舎で育ち、様々な生きものと接する機会が多くあったからかもしれません。
我が家で正式に育てていた生き物は猫とハムスター、2羽のセキセイインコでしたが、怪我をした蛇やハト、捨て犬や捨て猫などが一時的に居座っていることも少なくありませんでした。
今ほど町の獣医さんが一般的ではなかったためでしょうか、怪我をした動物の治療を受けさせる施設が身近にはなく、動物園に相談をしていた記憶があります。
「動物のお医者さんになって、野生の動物を助けたい!」
そんな夢ははかなくも消え去りましたが、この業界に居座っているのも「夢に少しでも近づきたい」、そんな気持ちの名残かもしれません。
動物病院は増加してきたが…
ペットが人間の生活に大きく関わって以来、「獣医さん」というといわゆる町で開業している動物病院を思い浮かべることが多いと思います。
わが国の獣医療の歴史は、明治期以降の軍馬や食料としての家畜の普及に応じて発達してきたと言われており、現在でも国家資格として獣医師の学習範囲は牛・馬・鶏などの家畜に関する内容が主となっています。
獣医師の仕事の範囲も、農林水産分野:家畜に対する医療行為、公衆衛生分野:食品としての食肉の安全性を守る・伝染病などの検疫を行う、小動物臨床分野:ペット(小動物)の病気の診断や治療を行う、バイオメディカル分野:人・動物用の医薬品開発、他など私たちの生活の中に多岐にわたって活躍しています。
ペット産業に関わる分野では上記の小動物臨床分野が主となりますので、以下文中の「獣医師」はペットの病気の診断や治療を行うことを生業にしている病院や獣医師と定義して書かせて頂きます。
農林水産省の平成24年飼育動物診療施設の開設届出状況(診療施設数)によると、全国で開設されている動物病院数は14703院。そのうち小動物の診療を行う病院数は10741院となっています。人気の職業として獣医大学卒業者の49%が小動物の診療に就職していた平成17年と比べてみると、動物病院数で1243院、小動物病院数で1259院も増加しています。