農業をやりながらの在野の歴史研究活動
それにしても、欧米列強のキリスト教に精神面で対抗するには「万世一系」の皇統しかない、と始まった新神道改革だが、本書を読む限り、行き当たりばったりの連続である。
皇統の確証たる古代陵墓は神代三陵でも神武天皇陵でも、考古学ではなく口碑流伝に基づいた曖昧な根拠。民間信仰や仏教を排除し皇祖崇拝につながる神道を立ち上げたのはいいものの、教義は一朝一夕には完成せず、結局「宗教を超えてただ拝礼」に行き着く。
そして第一回帝国議会直前の『教育勅語』発布(1890年)で、「道徳=皇祖皇宗の遺訓」とし、国家神道の枠組みが決まる。
「農業をやりながらの在野の歴史研究活動、けっこう大変だったのでは?」
「ほとんど県立図書館に行けなかったり、専門書も手に入れづらかったりと、田舎ならではの不便さはあります。ただ、単調な草取りとか毎日やっていると、その間は頭の中は暇なので、頭の中で執筆ができたという面がありますね」
東京工大数学科卒で元文部科学省官僚と異色経歴の窪さん、「歴史好きの私には田舎暮らしが合っているようです」と笑顔で言うのだ。