2つの事例で分かること
最初の例では約5年、後者の例では約20年間、漁獲をほぼ行なわずに資源を回復させていることが分かります。共に科学的根拠に基づく数量管理で、現在に至ります。
また、日本で行われている下のグラフにあるニシンの稚魚放流は、ノルウェーなどでは行われていません。稚魚の放流数と漁獲量の動向には相関関係が見られないことが読み取れます。
ニシンの資源管理を成功させるために必要なのは、数量管理です。「科学的根拠に基づく資源管理を行う・漁獲可能量(TAC)個別割当制度(IQ、ITQ、IVQ)などを実施する」ことが不可欠です。この基本的な資源管理なしに、魚の資源を管理し続けても、限られた数量での極々稀なケースを除き、うまく行きません。
ニシンという魚は多獲性魚種です。自主管理に基づく日本の漁獲量は、1.4万トン(2021年)程度に過ぎません。一方で、科学的根拠に基づいて漁獲枠(TAC)を設定して、それを漁業者や漁船ごとに分配している国々の漁獲量は、わが国より、はるかに多くなっています。
獲り過ぎてしまうことを阻止する仕組み
下のグラフをご覧ください。1960年代以降にニシンが獲れなくなってから、ほんの一瞬漁獲量が増えたことがありました。しかしながら、せっかく増えようとしていたニシンの資源は、わずか1〜2年で潰れてしまいました。
データを見ると、沖底(沖合底引き漁業)が増加分を漁獲していたことが分かります。資源が増えた事象は「卓越級群」が発生したためと考えられます。魚にとって環境条件が整い、例年より多くの稚魚が育って生き残るケースです。
なお、問題の本質は、大量にニシンを獲ってしまった沖底ではなく、漁業ごとにも、漁業者、そして漁船ごとにも枠が割り振られていなかったことにあります。また、ニシンに限らず、科学的根拠に基づく漁業ごとの漁獲枠がなく、沿岸漁業に配慮しない漁業を続けていることで、資源が減り、かつ沖合漁業と沿岸漁業がにらみ合いを続けているケースをよく聞きます。ノルウェーなどでは、沿岸漁業に配慮した漁獲枠を設定しているので、日本のようなにらみ合いの話は聞きません。