第2はこれまでの世論調査に入ってこなかった有権者層の投票行動である。米国では選挙前の世論調査や、投票日の出口調査の結果があてにならないケースが増えてきていることが指摘され始めて久しいが、今回の中間選挙も例外ではなかったようだ。
特に、今回は、メディアの世論調査には答えないような層(主に若年層や、無党派層)が妊娠中絶問題や銃規制問題などの社会問題などの問題が選挙戦の論点として出たことを契機に投票所に足を運んだケースが多いことが指摘された。そもそも世論調査の母集団に含まれない彼らのような有権者の投票行動を分析するツールが確立されていないため、彼らの投票行動を予測することができず、その結果、投票日直前の選挙観測とも大きく違う結果が出た、というわけだ。
2024年大統領選挙に向けた両党のジレンマ
理由はともあれ、このように両党の議会勢力が拮抗した状態で、バイデン政権は後半に突入することとなった。このことは、当然ながら、24年大統領選挙をめぐる両党の動向にも大きな影響を与えることになる。
民主党側は、事前予想に反して両院で善戦したこともあり、バイデン大統領が正式に再選を目指して出馬を決断した場合、党内から対抗馬が出る確率はぐっと低くなった。ただし、バイデン大統領と同世代のナンシー・ペロシ下院議長(82歳)が、第一線から身を引き、後進に道を譲ると決めたことで、バイデン大統領にも同様の進退判断を求める声が民主党内から出るのではないかという指摘もある。
他方で、バイデン政権発足後の2年間、カマラ・ハリス副大統領がほとんど存在感を示すことができていないこともあり、バイデン大統領が出馬しないことを決めた場合には、民主党予備選は混戦になる可能性が高い。
対する共和党側の悩みは深刻だ。前述のように、今回の中間選挙の結果を見れば、トランプ前大統領の賞味期限が切れつつあることは明らかだ。むしろ、フロリダ州で圧勝したロン・デサントス知事や、20年の知事選で大方の予想を覆して勝利したグレン・ヨンキン・バージニア州知事、ラリー・ホーガン・メリーランド州知事など、24年大統領選出馬に意欲を示す次世代の政治家が共和党内では出てきている。
しかし、そのような傾向を完全スルーして、11月15日、トランプ前大統領は、24年大統領選挙出馬表明を強行した。大統領選出馬を表明することで、現在進行中の、21年1月6日の連邦議事堂襲撃事件への関与をめぐる捜査をはじめとする法的トラブルから自分自身を守ろうとしているのではないか、という見方もある。
理由はどうあれ、「脱トランプ」を図りたい共和党関係者にとっては、トランプ前大統領の大統領選出馬表明は、迷惑以外の何物でもなく、保守系メディアの代表格のフォックス・ニュースですら批判的な立場をとっている。
どちらの党にも共通しているのは「党をけん引していく次世代指導者の不在」だ。24年大統領選を見据えた動きが今後、活発化していく中、両党の悩みは続く。