2023年1月30日(月)

インドから見た世界のリアル

2023年1月8日

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長尾 賢 (ながお・さとる)

米ハドソン研究所 研究員

学習院大学大学院にて博士号(政治学)取得。米戦略国際問題研究所(CSIS)客員研究員などを経て2017年から現職。日本戦略研究フォーラム上席研究員、スリランカ国家安全保障研究所上級研究員、未来工学研究所特別研究員なども兼任。著書に『検証 インドの軍事戦略』(ミネルヴァ書房)。

ロシアと中国を知るためにも有効

 最後に、この演習は、特に日本にとって、戦術上、得るものが多いことが重要である。

 インドが今回、日本に持ち込む戦闘機はスホーイ30戦闘機だ。これはもともとはロシア製の戦闘機である(一部電子機器などをフランス製にするなど改造されてはいる)。実は、中国が保有している戦闘機も、スホーイ30とその派生型が多い。だから、日本の戦闘機にとっては、インドの戦闘機と戦う訓練は、中国やロシアの戦闘機と戦う訓練にもなるものだ。

 それは日本の戦闘機パイロットにとって貴重な経験になる。日本としては、もっと広範に、頻繁に実施し、多くのパイロットを鍛えたいところだ。

 インドにとっては、すでに米国とも、豪州とも、戦闘機の訓練を実施したことがある。米国製の戦闘機との訓練は経験済だ。だが、日本と訓練することで、今後、日米豪印の「クアッド(QUAD)」4カ国全体で訓練する際の方法について、具体的に検討することができるようになる。それは意義がある。

 また、日本は、日々、中国機やロシア機の領空侵犯に対処しなければならない国だ。インドは、ロシアから戦闘機の使い方を学んだことはあるが、ロシアが「敵」になった経験はないだろう。

 それに、もし海の上空での空中戦の訓練を行う場合、陸の上空とは違う部分があるかもしれない。その際は、日本の方が得意かもしれない。これからインド洋でより広く活動するであろうインドの方も、日本から学ぶ戦術上の教訓は多いだろう。

対中戦略の要となるインドとの連携

 昨年末に公表された「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」では、米国、豪州に続き、インドとの防衛協力の重要性が明記されている。日本の公文書では、重要度の高い順に記述するから、インドとの防衛協力を、ヨーロッパ諸国や韓国との防衛協力よりも先に記述していることは、より重視していることの表れといえる。

 日印間の武器取引についても、今、艦艇に搭載する最新型のアンテナ「ユニコーン」の輸出について協議が行われている。日印の連携は、米国や豪州との連携と相まって、対中国戦略の要になる。戦闘機の共同訓練は、それを明確に示すことになるだろう。

 
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