2023年1月30日(月)

ニュースから学ぶ「交渉力」

2023年1月13日

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田村次朗 (たむら・じろう)

慶應義塾大学法学部 教授、弁護士、米ハーバード大学国際交渉学プログラム・インターナショナル・アカデミック・アドバイザー

慶應義塾大学法学部卒、米ハーバード・ロー・スクール、慶應義塾大学大学院。ブルッキングス研究所、米上院議員事務所客員研究員、米ジョージタウン大学ロースクール兼任教授を経て現職。著書に『ハーバード×慶應流 交渉学入門』(中央公論新社)、『リーダーシップを鍛える「対話学」のすゝめ』(共著、東京書籍)、『16歳からの交渉力』(実務教育出版)など多数。

 早くも2023年を迎え、国会では来年度予算に向けた審議が始まろうとしている。昨年暮れには、防衛費の増額に対してその予算をどのように捻出するのか、与党内で活発に議論されていたことが報道で明らかになっている。国家予算としてある程度のパイが決まっている中でそれをどのように分配することが、国を発展させる最も効果的で効率的な最善策であるのか、慎重な検討は欠かせない。

(AndreyPopov/gettyimages)

 しかし実際には、そのような観点から国益を追求するというよりも、縦割りの弊害により官僚間で対立する場合も多い。それが最も顕著に現れるのが予算編成である。今回は、官庁間での意見の相違や対立を例に挙げながら、交渉学におけるミッション、すなわち、俯瞰的見地から考えた最終目標を共有することの重要性について解説する。

日本に多く存在する縦割りの弊害

 最近筆者の目を引いたのが、22年12月18日に日本経済新聞に掲載された「コンパクトシティー阻む「縦割り行政」 見えぬ成功例」である。

 この記事は、コンパクトシティーの構築がうまく進んでいない理由は、縦割り行政だと指摘している。つまり、駅前などの開発は国土交通省、郊外の大規模開発は経済産業省とそれぞれ管轄が異なるため、調和のとれた開発が進まない状況を生み出しているという。

 本来であれば、国や地方自治体が旗振り役となって、国づくり、まちづくりの主役となるべき、そこに住む人々を巻き込んだ形でどのような開発を進めるべきか議論することが成功への鍵と言えるだろう。しかし、これには相当な労力と時間を要するため、実際にそうした橋渡し的な調整が行われることはあまり期待できない。

 それでもやり遂げて成功した貴重な事例として、富山市を挙げたい。森雅志前市長が、住民はじめ関係者のコンセンサスを得るために回を重ねて説明に努め、特筆すべきリーダーシップを発揮して実現したコンパクトシティー政策は、世界でも評価されている。

 国の根幹に関わる「インテリジェンス」の部分においても、縦割りの問題点が指摘されている。インテリジェンスとは、収集した情報を分析・評価して、それを政策決定や危機管理に反映させることをいう。

 特に、冷戦が終わる頃までは、インテリジェンスを扱う機関として、内閣調査室、外務省、防衛庁、警察庁、公安調査庁などがあったが、これらの間で情報が共有されることはほとんどなかったと言われている。いずれも秘匿性の高い組織であるとは言え、各機関が個別に対応していたということであり、当然相乗効果は望めず、日本の危機管理の甘さが官庁間の非協調性に求められ得る状況であった。


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