2024年4月20日(土)

キーワードから学ぶアメリカ

2023年2月10日

 さらにNRAは、連邦、州、地方の各レベルで組織を整備しているため、どこかのレベルで銃規制の動きがみられた場合は、その情報を組織を通して迅速に全米に伝達することができる。立法化や訴訟の試みがなされたとしても、組織的に対応することが可能なところがNRAの強さなのだ。

市民が能動的に活動するために

 そして、銃規制反対派がその根拠としてしばしば強調するのが、建国の理念と反政府の伝統である。最大の根拠とされるのが、「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を所有しまた携帯する権利は侵してはならない」という合衆国憲法の修正第2条の規定だ。

 この条文が民兵に言及しているのは、今日からすると時代錯誤だと思う人もいるかもしれない。だが、米国では、民兵は大きな象徴的意味を持つ存在だ。民兵の経験は人を自立した成人にする。民兵としての自覚を持つ人々は、圧政から共同体を守ることができると考えられているのだ。

 そして今日でも、政府が暴力を独占してしまえばその暴力を国民に向けるようになるという危惧を抱いている人がいる。この政府に対する不信の強さは、先進国の中でも米国に特有であり、それが銃所持を正当化する考え方につながっているのだ。

 また、米国では、反政府の考え方とは別に、公共の利益を守るために市民が能動的に活動することが必要だという発想も強く、民兵と銃はそれを象徴するものと位置づけられている。例えば、メキシコ出身の不法移民から米国を守ると称して、米墨国境地帯で民兵団を組織している人たちは、政府の役割を補完するために活動するのだと主張している。

 これら3つの要因の他にも、銃規制反対派はさまざまな論拠を上げている。例えば、銃がなければ力の劣る者は力のある者に対抗することができないが、銃があれば力のあるものも力の点で劣る人のいうことを聞く、とか、人々は失礼な発言をして撃たれたりしてはいけないと考えることから銃のある社会では人々は礼節を守るようになるというような議論だ。

 このように、米国の銃の問題は、米国社会が抱えている問題点、矛盾点を顕著に示しており、非常に興味深いといえるでしょう。

   
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