2024年11月22日(金)

未来を拓く貧困対策

2023年3月6日

導入された「所得連動型返還方式」

 給付型奨学金の対象とならない場合も、成績基準によって無利子奨学金を利用できる。無利子奨学金では、従来の「定額返還方式」に加えて、「所得連動型返還方式」を選択できる。

 所得連動型返還方式とは、毎月一定額を返還する定額返還方式に対して、前年の所得に応じて返還月額を決定する。大学卒業後に就職がうまくいかず、所得が低い状況でも無理なく返還することができ、奨学金の返還負担を減らすことができる(図2)。

(注)返還のモデルケースとして、無利子奨学金の私立自宅生の貸与額(貸与総額259.2万円、貸与月額5.4万円、貸与期間48月)を設定
(出所)文部科学省「奨学金事業の充実」  写真を拡大

 ただし、所得連動型返還方式にはいくつかの注意点がある。第1に、奨学金を借りるにあたって機関保証料として月額2000~3000円がかかる。これは奨学金から差し引かれる。第2に、所得把握のためにマイナンバーの提出が要件となる。第3に、これが最も大きな問題だが、月々の返還額は少額になったとしても、奨学金の返済自体がなくなるわけではない。返済期間は長期化するため、ずっと奨学金に縛られる人生を送ることになる。

 学生は将来のリスクや収入をどのように確保するかという予測困難な将来を見据えて、選択をしていく必要がある。

 奨学金の運用を担う独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)では、「進学資金シミュレーター」を用意している。設問に答えていけば、自分がどの奨学金が対象になるかを確認することができる。

 また、各大学では入学前のオープンキャンパスや合格者対象説明会で個別相談会を用意したり、入学式前後に説明会を設けたりするなどして周知を図っている。これらも積極的に活用していきたい。

民間奨学金情報まとめサイトも登場

 これまでの説明は、JASSOが運営する奨学金である。実はJASSOのほかにも、大学、財団、地方自治体や民間企業などの奨学金を運営する団体が3000以上ある。これまで、こうした奨学金の情報は分散しており、その情報を収集するのは簡単なことではなかった。

 こうした問題の解決策として、日本のほぼすべての奨学金情報を集約したサイトが「ガクシー」である。ウェブサイトをみると、「もらえる奨学金」「所得制限なし」「成績制限なし」「授業料減免」といった各カテゴリから奨学金を探すことができる。また、奨学金ランキングも用意され、返済不要、海外留学、海外進学などの目的別にランキング形式で応募できる奨学金も確認できる。

 JASSOの給付型奨学金が所得制限で受けられない場合には、こうした民間奨学金の利用を検討することも考えられるだろう。


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