2024年11月24日(日)

都市vs地方 

2023年5月12日

 次に、議員となった場合のわかりやすいメリットとして、議員報酬の多寡があげられる。最近のマスコミの報道でも不祥事を指摘された国会議員が辞職をしないことに対し、議員報酬欲しさに地位にとどまっているのではないかという批判や国会に登院していない議員のために月額どれだけの歳費が支払われているかといった指摘がある。

 選挙で当選した議員の地位を失わせることは、慎重に議論しなければならないことであるが、もし議員になることのメリットの1つに議員報酬を得ることが大きく関わっているとするならば、議員報酬の高い議会の選挙には多くの候補者がそれを求めて立候補するとも考えられる。

 そこで、図2では総務省公表の「令和3年地方公務員給与の実態調査」による道府県及び指定都市議員の1人当たり月額報酬と無投票選挙区の比率の関係を示している。

(出所)表2および総務省公表の「令和3年地方公務員給与の実態調査」第2 統計表II  特別職関係 第10表 特別職に属する職員の定数及び平均給料(報酬)月額より筆者作成
(注)横軸:月額報酬(円)、縦軸:無投票となった選挙区の比率(%) 写真を拡大

 図2をみると規定上の月額報酬と無投票選挙区の発生の比率の間にも明確な相関は見られないことが分かる。議員報酬目当てに立候補するというわけではないと言える。

議員としての〝やりがい〟で立候補するのか

 次に、議員となるモチベーションとして、当選後の議会を通じて、予算を審議して決定できる権限に焦点を当てる。

 有名なニスカネンの官僚の予算最大化原理に基づけば、自己の関与・采配出来る予算が多ければ多いほど、公務員の効用は増大するといえる。これは議員にも当てはまると考え、都道府県および政令指定都市の歳出予算を議員定数で除し、議員1人当たりの行政支出の予算額と無投票と選挙区発生比率との関連を見た。

 もし、より多くの予算に関与できることが議員の経済的なモチベーションを高めるとすれば、立候補が促され、無投票選挙区の発生率は低下することとなる。図3は21年度の都道府県決算状況調、市町村別決算状況調より、議員1人当たりの歳出額と無投票となった選挙区の比率の関係を示している。

(出所)表2および総務省の「令和3年度の都道府県決算状況調・市町村別決算状況調」より筆者作成
(注)横軸:議員1人当たりの歳出額(円)、縦軸:無投票となった選挙区の比率(%) 写真を拡大

 図3を見ると、バラツキはあるものの、議員1人当たりの歳出額が少ない地域で無投票となった選挙区の比率が減少しているようにも見える。特に、議員報酬を1000万円/年と仮定すると歳出予算がそれを超えるにしたがって、無投票選挙区が少なくなっていくように見えることは興味深い。

 最後に、選挙のコストとして1選挙区当たりの定数を取り上げる。1選挙区当たりの定数が少なくなるにつれ、トップ当選またはベスト2までの得票を得なければならないので、ある程度票を得ても落選となってしまう「死票」が増加し、選挙活動が徒労に終わる可能性が高くなる。

 逆に、1選挙区当たりの定数が多ければ、得票数が下位でも定数内であれば当選できるため、立候補は促され無投票となる選挙区の比率は小さくなることが考えられる。図4は1選挙区当たりの定数と無投票の状況を示している。

(出所)総務省「令和5年4月9日執行 統一地方選挙結果の概要(速報):無投票の状況について」より筆者作成
(注)横軸:1選挙区当たりの定数(人)、縦軸:無投票となった選挙区の比率(%) 写真を拡大

 図4を見ると、1選挙区当たりの定数が増えるにつれ、無投票となった選挙区の比率が低下しているようである。下位当選の可能性が広がるにつれ、立候補する候補者が増えることが見て取れる。


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