2024年5月19日(日)

都市vs地方 

2023年5月12日

立候補者を増やす具体的な施策は

 最後に、4つのファクターすべて考慮する重回帰分析を行って無投票選挙区の発生要因を考える。結果は、以下の通りである。

 これを見ると、投票率と議員報酬は統計的に有意な結果が得られていないが、議員1人当たり歳出額と選挙区当たりの定数が大きいことは有意に立候補を促し、無投票選挙区を減らす可能性を持っていることを示す。この方程式はかなりラフなものであるが、決定係数を見ると0.505と無投票選挙区発生率の50%はこの回帰式で説明可能であることがわかる。

 選挙を通じた主権の行使が適切に成立するためにも、また今後急速に少子高齢化する地方の政策を適切に決定するためにも、無投票選挙が続くことは望ましくない。この回帰式からどのような政策的な含意が導き出されるであろうか。

 まず、議員報酬を増して立候補を誘発しようという政策は、財政改革が叫ばれている中、財源は税であるので、有権者の賛同を得にくいであろうし、少なくとも今回の分析結果からは有効とは言えない。

 次に、議員1人当たりの歳出額を増やすことも難しい。しかし、議員定数(分母)の見直しにより「1人当たりの歳出額」を高めることは可能である。もちろん、議員1人当たりの歳出が増えることで、恣意的な支出が増えないように、予算の透明性を高めることも必要である。

 3番目に、1選挙区当たりの定数を増やすことで立候補者を増やすことを考える。しかし、議員報酬および1人当たりの歳出額の見地からすれば、議員定数を大幅に増やすことは難しい。

 このため、選挙区の統合などにより、1選挙区当たりの定数を増やすことが考えられる。特に県議会の場合は市町村単位よりも広域での地域の在り方を考えることのできる代表者が必要といえるのではないか。

 このようにして、女性を含めたより多くの候補者が政治参加できる環境を作ることが望ましい。市民が候補者として参加するモチベーションを高めるとともに、その候補者から適切な代表を選ぶ環境を整備しなければならない。そのためには、有権者側の投票率が高く維持されることも必要である。

 
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