朝日新聞の調査では、街頭で計1000人の状況を調べたところ、マスクを外していた人は3月には1割強だったが、規制解除当日の5月8日には4割近くが外していたという。また5月15日のNHK世論調査では、これまで通りマスクをする人が55%、外すことが増えた人が33%、いつも外している人は8%、そして感染拡大の不安を大いに感じる人は15%、ある程度感じる人は49%だった。このような結果を見ると感染の恐怖はそれほど小さくなっていないし、マスクを全くしない人は少数派のままである。
各国がマスク規制を解除した理由は、感染拡大が一段落したこと、致死率が大幅に低下したこと、そして新型コロナは空気感染(エアゾル感染)であり、マスクは飛沫感染には有効だが空気感染の防止効果はほとんどないためだ。このことは以前にも紹介したが、依然としてマスク神話を信じている人が少なくないので、もう一度考えてみよう。
マスクの効果は?
日本ではこれまでに8回の流行があり、1波から4波までの感染者は少なかったが、致死率は1~2%と高かった。6波から8波で感染者数は桁違いに多くなったが、致死率は10分の1に減った。
5波までの間に「GoToキャンペーン」や東京オリンピック・パラリンピックが開催され、これらは人流を増やして感染を拡大するとして批判された。しかしGoToキャンペーン継続中に2波は終わり、オリ・パラは流行を拡大しなかった。この結果からこれらのイベントが流行を引き起こし拡大したのではないことが分かる。
5波のころからワクチン接種が始まり、その効果で流行は収まったとも言われた。しかしその後、接種した人が増えたにもかかわらず大きな6波が起こった。こうしてワクチンの感染防止効果も重症化防止効果も持続しないことが判明した。
緊急事態宣言は4回出され、飲食店の営業停止など社会経済活動が止められた。しかし被害のあまりの大きさと効果に対する疑問から以後は出されていない。費用対効果を考えた正しい政治決断だ。
問題は外出自粛・三密回避・マスク着用などの個人対策の効果だ。この3年間、大多数の人が個人対策を順守した。にもかかわらず流行は繰り返して起こった。
欧米でも韓国でもすでにマスク規制は解除しているが、その後、感染拡大は起こっていない。このような経緯を見ると、マスクの常時着用には流行発生を止める効果はないことが分かる。もちろん一般的な衛生対策としては必要だが、マスクをすれば感染しない、流行は起こらないといった幻想は捨てなくてはいけない。
同調圧力と選択の自由
日本人は必要以上に他人の目を気にし、その結果、同調圧力が強いと言われる。民主主義の原則として個人の選択の自由を守るべきだが、同調圧力のためにマスクを外す自由が守られない状況がある。
この問題が面倒なのは、選択の自由に付随する「他人に迷惑をかけない限り」という条件だ。マスク神話を信じる人は、マスクを外している人が自分を感染させると恐れて、その選択の自由を認めることができないのだ。
この問題を解決するために、文部科学省は「マスクを外す規制」を始めた。4月1日以降、学校教育活動については「マスクの着用を求めないことを基本とする」としたのだ 。これはマスクの感染防止のメリットと、教職員や児童生徒間のコミュニケーションを妨げることのデメリットを冷静に比較した結果であり、英断と言えよう。