2024年12月10日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年5月22日

 4月25日付の米ワシントン・ポスト紙で、同紙コラムニストのデイヴィッド・イグネイシャスが、「韓国と米国のパートナーシップは画期的な成功である。われわれはそれを持続させる必要がある」との論説を書いている。

(dvids)

 バイデン大統領は今週韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領を国賓として迎え、韓国が米国の保護のもと経済成長を遂げた成功物語を祝う。だが現在、米国の核の傘の整備の必要性や、インド太平洋での米国の力の将来についての問題がある。米国の核を含む戦力で同盟国を守る「拡大抑止」への韓国の信頼を強化するため、バイデンは核兵器を配備し、その使用について協議すると約束するだろう。これに応え、尹は核不拡散条約への韓国の支持を再確認するだろう。

 昨年のある世論調査では、韓国人の71%が韓国の核兵器開発を望んでいる。尹自身、今年初めに北朝鮮を抑止する米国の能力に疑問を表明したようだった。1月に尹は、「韓国は戦術核兵器を導入するか、韓国自身で作るかだ」と述べた。

 かつて韓国は核兵器計画を持っていたが、1975年に放棄し、核不拡散条約に参加した。韓国が核兵器計画をやめたのは米国の力を信頼したからである。しかしこの信頼は最近揺らいでいる。一つの理由は「米国第一主義」の前大統領トランプの同盟国に対する軽蔑である。二つ目が北朝鮮による核兵器の脅しとウクライナ侵攻後のロシアによる核の脅しである。最も心配なのは第3の要因で、中国が今後10年で800~1000発の核弾頭を作ろうとしていることである。

 米国の核の傘はアジアの友好国にとって万全であるように見えていない。尹の訪米の重要性は、米国が同盟国を保護するより広い範囲と約束を再確認する点にある。

 尹の訪米は1月の岸田総理の訪米に続くものである。尹が国内の政治的リスクにかかわらず日本に手を差し伸べることは、米国のアジアにおける最大の資産である日米韓3カ国パートナーシップを強化することに資する。

 70年前、韓国は朝鮮戦争で「爆破され、焼かれた諸都市」の廃墟であり、何百万人もが「ホームレスで無職で不潔であった」と、歴史家フェーレンバッハは書いた。今日韓国は経済と技術の超大国である。米国の挑戦は、この韓国の進展をどう将来に延長していくかである。

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 このイグネイシャスの論説は良い論説である。

 今回の尹韓国大統領の訪米は非常に成果があったと思われる。拡大抑止の強化を柱とする「ワシントン宣言」が発表され、核ミサイルを搭載できる原子力潜水艦の韓国への派遣や「米韓核協議グループ」の新設も合意された。この米国の方針は、日本への拡大抑止の強化にもなると思われる。


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