2024年5月19日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2023年6月15日

 自然環境がよく、英国の教育が受けられ、しかも費用が格安となれば、同校に入学したいと希望する中国人が多いのも無理はない。さらに、その人によれば「いま中国では共同富裕政策、習近平政権の方針などで、インターといえども、国内政治の影響を受けかねません。そうした不安要素もあり、中国から距離的に近い日本のインターに興味を示す富裕層が多いのです」という。

教育への関心が高い中での〝選択〟

 筆者はこれまでの著書の中で、中国の教育事情について何度も触れてきた。18年に出版した『日本の「中国人」社会』(日経プレミアシリーズ)の取材で、とくに印象に残っているのは、在日中国人二世の大学生が語っていた、次のような言葉だった。

 その男性は、自分の父親と親しい在日中国人の子息の多くが東京大学や京都大学などに通っているといい、「自分は幼い頃からずっと慶應で野球ばかりやってきたので、肩身が狭かった。親たちはエリートで教育熱心な人が多く、子どもの大学は最低でも早慶以上でなければ、という雰囲気だった」と話していた。

 また、日本の小中学校に通った経験があり、最終的に北京の大学を卒業した中国人女性は、父親の転勤で高校入学時に中国に戻ったとき、数学や理科で相当な遅れがあり、日本の中学3年は中国の小学4年レベルだった、という衝撃的な話をしていた。

 日本に住む中国人にとって、わが子にどんな教育を受けさせるかは最大の悩みのひとつだ。ずっと日本に住む予定なら、日本の進学校を目指す人が多いが、将来の可能性(海外留学)を考えてインターを選択したり、母国語教育を重視する中華学校を選択したりする場合もある。

 中学までは日本で教育を受けさせ、中国の高校、あるいは、最終的には日本ではなく、中国の名門大学に行かせたいと願う親もいる。筆者はこれまでかなり多くの在日中国人に意見を聞いてきたが、考え方は千差万別だった。

 だが、昨今、日本に移住した中国人や、移住を検討している中国人にとって、子どもの進学先として、最も検討されているのがインターだ。東京には港区、品川区、渋谷区など十数校のインターがある。都内で起業した知り合いの中国人によれば、最近、中国から移住した知り合いの多くが、日本の有名進学校よりもインターのほうがいいと考え、先に学校を選んでから、その近くに住居を構える傾向があるという。

 日本に長く住んで、日本語も堪能な在日中国人と比べて、彼らは日本語ができない。英語は堪能な場合が多いが、日本人とコミュニケーションを取ることが難しいため、日本の学校に子どもを通わせることはそもそも難しいという問題があるが、それ以外に、中国でもインターに通わせていたので日本でもインターに通わせたいこと、本国(英国や米国)の有名大学に進学しやすいこと、などのメリットがあるからだ。日本人富裕層の間でもインターは人気が出ているが、中国人はさらに熱心だ。


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