OECDのウェブサイトでは、各国の貧困率(Poverty rate)を公表している。最新値の表示はもちろん、高齢者や子どもなど類型別の貧困率や、経年変化の国際比較もできる。OECD加盟国の最新値をみると、日本が米国や韓国よりも貧困率が高くなっていることがわかる(図表2)。
ただし、OECDのグラフにおける日本の最新値は、18年の15.7%である。これを今回公表された数値(15.4%、最新値21年)に置き換えると、米国(15.1%、最新値22年)、韓国(15.3%、最新値21年)よりも高い結果となる。日本よりも貧困率が高いのは、メキシコ、ルーマニア、コスタリカなどを残すのみとなった。
つまり、少なくとも現時点の最新値において、日本の貧困率が先進国で最悪であることが確定したのである。
米国、韓国とは異なる傾向
18年の公表値では、日本の貧困率(15.7%)は、米国(18.1%)、韓国(16.7%)を下回っていた。「日本の相対的貧困率は、主要7カ国(G7)でワースト2」といった表記を使って危機感を煽っていたが、日本よりも貧困率が高い国があるという事実は揺るがなかった(グラミン日本「POVERTY 日本における貧困の実態」)。
かつて、米国は格差社会を体現する国であり、不十分な社会保障や不安定な雇用などにより貧困率が高いと説明されてきた。08年に発行された堤未果氏の『ルポ貧困大国アメリカ』は、日本エッセイスト・クラブ賞および新書大賞を受賞し、シリーズ累計で70万部を超えるベストセラーとなった。
韓国では、19年に映画『パラサイト 半地下の人々』が公開され、観客動員数は1000万人を突破。日本でも瞬く間に大ヒットとなり、20年公開の外国映画では最高の興行収入を記録した。アカデミー賞の最多4部門を受賞するなど、韓国の厳しい貧困の実態は社会の注目を浴びてきた。
OECDのウェブサイトでは、各国の貧困率の経年変化をみることができる。日本、米国、韓国の貧困率の推移をみてみよう(図表3)。
グラフをみると、韓国の貧困率が継続して改善傾向にあることがわかる。これは、日本の生活保護制度にあたる「国民基礎生活保障制度」を利用しやすくし、最低賃金を大幅に引き上げるなどの再分配政策に取り組んだ成果といえる(金明中「韓国における所得格差の現状と分配政策:新しい尹政権の「選択的福祉」政策は所得格差を解消できるだろうか」)。
また、米国の貧困率は20年から急速に改善し、韓国を追い抜いている。もっとも貧困率の改善は、コロナ対策による生活保障の貧困削減効果が大きく、その対策は一過性、または期限付きで、インフレが高まるなかで、その効果も急速に薄れているとの指摘もある(木下武徳「アメリカにおけるコロナ禍の低所得層への経済給付:公的扶助を中心に」)。
これに対して、日本の貧困率は18年に15.7%の表記があるのみである。貧困率の推移をみることさえできない。先に紹介した図表1をよく見ると、18年より前と後でグラフが分断されていることに気づく。これは、日本にはOECD基準で計算した17年以前のデータが存在しないためである。