2023年12月5日(火)

勝負の分かれ目

2023年7月30日

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田中充 (たなかみつる)

スポーツライター、尚美学園大学スポーツマネジメント学部准教授

1978年京都府生まれ。早稲田大法学部卒業後、地方紙を経て産経新聞社に入社。スポーツ報道の現場でプロ野球や米大リーグ、夏・冬合わせて5度の五輪を現地で取材し、フィギュアスケートは専門誌にも多数寄稿。2023年春から現職。23年9月に「羽生結弦の肖像 番記者が見た絶対王者の4000日」(山と渓谷社)を出版。共著に「スポーツをしない子どもたち」(扶桑社新書)。専門はスポーツメディア論、スポーツノンフィクション。

 衝撃的なKO劇の末につかんだ4階級制覇達成だった。プロボクシングのWBC、WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ12回戦で、挑戦者の井上尚弥が王者のスティーブン・フルトン(米国)に8ラウンドTKOで勝利した。

(©SECOND CAREER)

 昨年12月に一つ軽い階級のバンタム級で4団体王座統一を果たし、階級を上げた初戦でいきなり世界のチャンピオンベルトを2本巻いたモンスター。年内にもスーパーバンタム級の4団体王座統一も視界にとらえている。

「最強の相手」へ勝ちにこだわる

 東京・有明アリーナを埋め尽くした観客席のボルテージが一気に爆発した。8ラウンド。この日のために練習を積んできたという井上の上下への打ち分けが勝利の突破口を開いた。

 井上が素早く見舞ったボディーへの左ジャブに、フルトンは「自分の目に入ってこなかった」とお手上げだった。ボディーに打ち込んだジャブで相手のガードを下げると、一瞬の隙を逃さずに強烈な右ストレートを顔面に見舞う。ぐらつく相手の顔面に、最後は跳び上がるように左フックをめりこませた。

 たまらずダウンしたフルトン。この瞬間を待ちわびた客席は大歓声に沸く。立ち上がった相手に対し、井上は一気にリングサイドへ追い込んで左右のパンチラッシュ。鮮やかなTKO勝利だった。

 5年ぶりに挑戦者としてリングに上がる井上は、父・真吾トレーナーによると「ここ最近では一番長い150ラウンドくらいのスパーリングをこなしてきた」という。井上はフルトンを「自分が思うこの階級の最強。自分のやるべきことをやり遂げる頭のいいボクサー」と警戒し、「スーパーバンタム級の初戦でフルトンと戦えることが一番のモチベーション」と意気込んでいた。実際、関係者も「かなり手強い相手」と話すほど前評判は高かった。


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