2024年5月20日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年8月31日

 なお、米国との協定にはパプアニューギニア国内に一部反対もあるようであり、それが同国のマラペ首相のやや不明瞭な発言や米国の慎重な発言に繋がっているのかもしれない。マラペは、われわれは全ての国の友人であり、どの国の敵でもないと言い、「われわれは戦争ではなく平和と寛容を支持し、民主主義やキリスト教との共存も促進したい」と述べた。オースティン国防長官は、「米国はパプアニューギニアに恒久的な基地を求めているわけではない」と説明している。

中国ににらみを利かせられる好立地

 パプアニューギニアについては、特に地理的重要性とPIFの重要国との二点が重要なように思える。同国は米軍アセットや兵站の分散に資することができる。更に同国は中国の南太平洋への入り口に位置しており(ラエはソロモン海に、マヌス島は太平洋に面する)、ソロモン諸島やキリバスなどへのアクセスをにらむことも可能になる。南シナ海やマラッカ海峡を通る中国のシーレーンからも遠くない。完成近いと見られるカンボジアのリアム海軍基地の中国使用への牽制にもなり得るだろう。

 域内で良い動きもある。インドのモディ首相が第三回印・太平洋島嶼国協力フォーラム出席のため5月に、インドネシアのジョコ大統領が7月上旬にパプアニューギニアを訪問(両国には西パプア問題もあり興味深い)した。更に、次のような動きも目を引く。7月24~28日にはフランスのマクロン仏大統領がニューカレドニア、バヌアツ、パプアニューギニア、スリランカを訪問した。報道によればフィジー首相は、転倒事故を理由に7月下旬の訪中招請を断った。

 日本も、関係国と連携し活動を強めていくことが重要である。林外相は今年3月ソロモン諸島、クック諸島を訪問した。いずれ総理の大洋州訪問も実現すべきだろう。上記の記事でも触れられている護衛艦「いずも」の寄港も有意義だった。経済協力も強化していくべきだ。

   
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