2024年5月20日(月)

食の「危険」情報の真実

2023年8月31日

 放射性物質による健康への影響では、「今は大丈夫でも将来がんになるのではないか」と心配する人が今も少なくない。ただ、放射性物質の健康影響は、広島、長崎の原爆被爆者について半世紀にわたって孫までの健康影響の調査がされており、結果として「遺伝的影響は認められていない」というのが科学的な事実だ。そして、飲料水の放射性物質の基準値は、チョルノービリ(チェルノブイリ)原発事故から学んだ経験を基にかなり厳しく決められ、検査もしっかり行われている。

ミネラルウォーターはエコで美味しいのか

 日本ミネラルウォーター協会によると、2022年度のミネラルウォーターの国内生産量は446万1325キロリットル(前年比107.4%)で過去最高を更新した。日本のミネラルウォーターの生産・消費量はこの30年、右肩上がりで増え続けている。

 昨年度の東京都の水道水に関する調査で、家庭で水道水を飲まずにボトルウォーターなどを利用しているのは16.5%。6人に1人は水道水を飲料水として利用していないことになる。とくに若い世代ほどこの傾向が強く、30代では20.8%、5人に1人がボトルウォーター派だ。水道水を飲料水として利用しない理由のトップは、「安全性に不安」(31.5%)で、次いで「おいしくない」(25.8%)、「においが気になる」(12.5%)の順だった。

 安全な水道水が蛇口をひねれば出てくるのに、ボトルウォーターを利用する人が多いのは米国も同じだ。脳科学者とマーケターがタッグを組んで買い物心理について明らかにした『「欲しい!」はこうしてつくられる』(白揚社)によると、米国でボトルウォーターが爆発的に売れるようになったのは、1970年代に炭酸水メーカーのペリエが行なったキャンペーンがきっかけだったようだ。その手法は、大勢の記者をフランスのペリエの「源泉」に連れていくなどして自然をアピールするストーリーを消費者に訴えるというものだった。

 イメージ戦略の成功は日本のミネラルウォーターも同じだろう。CMの効果もあり、ミネラルウォーターはなんとなくエコな感じがするが、実際は大量のプラスチックゴミを排出しているという現実がある。

 筆者自身、外出先ではペットボトルのミネラルウォーターを利用するが、家では水道水を冷やして飲んでいる。ちなみに、「おいしい水」を研究していた専門家によると、水のおいしさは温度に左右されるという。水道水をまずいと思っている人には、一度冷やして飲んでみることをお勧めしたい。

食にまつわる「危険」情報を検証する連載『食の「危険」情報の真実』の記事はこちら

   
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