多角化が進む支援ビジネス
14年以降に設立された子会社等を業種別に整理した図表2を見ると、最も多いのが投資専門会社で34社である。筆者が数えた限り、約100行の地方銀行のうち約半数で63社を保有している状況だ。イノベーション支援や再生支援、事業承継に投資を介してコミットすることが期待されている。
これに次ぐのが地域商社で、14年以降25社の子会社等が新たに設立された。3位がコンサルティング会社、証券子会社でそれぞれ15社。これに次ぐのがシステム会社で14社だった。
新設数でみると人材紹介業は8位だが、人材紹介業に参入する銀行は多い。銀行本体や人材紹介業以外の子会社が参入するケースがあるからだ。背景には、18年3月の監督指針改正で、地域金融機関等において取引先企業に対する人材紹介業務が可能である旨が明確化されたことがある。
23年6月に金融庁が公表した「地域金融機関等による人材仲介を通じた事業者支援の実態把握調査」アンケート結果によれば、埼玉りそな銀行を含む地域銀行100行のうち有料職業紹介事業の許可を取得し事業を開始している銀行が87行あった。このうち人材紹介会社が取得したケースは17行である。銀行系コンサルティング会社のケースが16行、銀行本体が取得しているケースが67行あった。銀行本体と子会社の両方で取得する銀行もある。
人材紹介業の場合、元から人材紹介子会社を活用することができれば新たに子会社を設立しなくてもよい。例えば、八十二銀行の子会社、八十二スタッフサービスは1986年9月の設立で、親銀行向けに人材派遣業、人材紹介業、給与計算その他福利厚生業務の受託を業としていた。2022年6月に銀行業高度化等会社の認可を取得して外販事業を拡大した。
銀行が持つ〝情報力〟
地方銀行が新設した子会社等の業務は多岐にわたるが、銀行に元からあった機能を切り出して外販する方向性と、銀行が持つ顧客接点を活かして新たなニーズに応える方向性は一致している。前者の例がシステム開発や人材紹介業とすれば、後者の例は地域商社だ。地域商社の業容拡大で期待される次の一手が広告事業だ。
19年、地域活性化に資する業務の例として「広告、宣伝、調査、情報の分析又は情報の提供を行う業務」が銀行法施行規則に加えられた。広告事業といえば、インターネットバンキング等の自行アプリに掲載するバナー広告など広告媒体業が頭に浮かぶ。
他方、地域商社が行う販売促進策として考えれば広告代理業も有望だ。
20年11月、岡山市に本店を構える中国銀行が地域商社「せとのわ」を設立した。マーケティング戦略の立案、企画開発、販路開拓の支援が本業である。
この地域商社には岡山県の地元紙の山陽新聞社と百貨店の天満屋がそれぞれ15%出資している。さらに地元のデザイン会社のアイディーエイと中国四国博報堂が人的支援をしている。地域商社に本格的に取り組むなら、百貨店が強みとするバイヤー機能と、新聞社や広告代理店が持つメディア機能を強化することが重要だ。
銀行が取引先の販売促進に取り組むとした場合、銀行ならではの強みは何かと言えば入出金データである。データ分析の成果としてのマーケティング精度の向上だ。