2024年11月22日(金)

脱炭素・脱ロシア時代のエネルギー基礎知識

2023年10月16日

化石燃料はいつ尽きるのか

 50年前から石油はやがて尽きると言われていました。最近でも石油生産がピークを打った(ピークオイルと呼ばれます)と何度か言われていましたが、依然として石油は50年以上生産可能な埋蔵量を持っています。

 石炭も100年以上の生産量に相当する埋蔵量があります。天然ガスも45年以上の埋蔵量を持っています(図-8)。

 使っても埋蔵量が減らないイメージがありますが、シェールガス、オイルにみられるように、技術の進歩により採掘可能な数量が増える影響があります。

 石油の消費量の推移と埋蔵量の推移(図-9)が示すように、生産量よりも埋蔵量の増加のペースが上回っています。

 埋蔵量がまだ十分あっても、主要国は2050年、中国は60年、インドは70年に脱炭素を宣言していますので、化石燃料の消費量はこれから大きく減少すべきですが、可能でしょうか。

 脱炭素は実現するでしょうか。

先進国も途上国も化石燃料頼み

 化石燃料は世界のエネルギーの約8割を供給しています。中国などの途上国が化石燃料に依存しているイメージがありますが、先進国も依然として化石燃料に依存しています。

 図-10の通り、米国、日本の一次エネルギー供給における化石燃料比率は8割を超え、再エネの導入が進んでいるドイツ、英国でも8割近い依存度があります。

 原子力発電が電力の7割を供給しているフランスは、化石燃料依存度が低いものの、それでも半分近くを依存しています。

 日本を含め主要国は2050年に化石燃料依存度をほぼゼロにする必要がありますが、可能でしょうか。

 化石燃料の消費量が増え続ける(図-11)今の状況から消費を一挙に反転させ、後27年で化石燃料を再エネと原子力主体の供給に切り替えるための投資は巨額になります。

 ビジネスチャンスとする向きもありますが、その巨額の費用を最終的に負担するのは、産業と家庭です。導入には時間もかかります。間に合うでしょうか。

 再エネは多くの国の電気料金を押し上げました。これから導入される量は桁がいくつか異なるレベルになります。エネルギー価格に与える影響もけた違いになります。

 化石燃料は、発電、自動車・航空機・船舶燃料、化学原料、暖房など多くの分野で使用され社会を支えています。そのため脱炭素の掛け声の中でも化石燃料の消費は増加する一方です。

 化石燃料使用と脱炭素がもたらす効用を良く比較し、実際の社会を考えた上でエネルギーの選択を行う必要があります。私たちの社会は脱炭素だけが目標ではないはずです。

ピークオイルについて学びたい方に
西山孝「資源論 メタル・石油埋蔵量の成長と枯渇」(丸善出版)
リンダ・マクウェイグ, 益岡 賢「ピークオイル 石油争乱と21世紀経済の行方」(作品社)
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