2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年10月24日

 欧州統合のプロセスにおいて「加盟国の拡大」は統合を進める推進力の一つであったが、少し前まで真剣に討議されなかった。しかし、ロシア・ウクライナ戦争で、ウクライナ加盟へ前向きな姿勢を取る必要が出てきており、解決すべき問題となっている。

(Nadzeya Haroshka/gettyimages)

 Economist誌9月30日号は「ウクライナにおける戦争は欧州連合(EU)を拡大し改善すべき強い理由である」(The war in Ukraine is a powerful reason to enlarge-and improve-the EU)と題する社説を掲載している。概要は次の通り。

 EUを27カ国から36カ国に拡大する(ウクライナ、西バルカン諸国、ジョージア、モルドヴァを含む9か国の新規加盟を受け入れ)のは、容易なことではない。最も新しい加盟国はクロアチアだが、その加盟は10年前のことであった。

 EU拡大という考えは長らく休眠状態であったが、ようやく討議項目として復活してきた。拡大完了の目標年次は2030年とされており、これは楽観的であるものの目指す価値がある。

 拡大は、EUの最も成功した政策である。ユーロの導入、単一市場の設立といったEUのプロジェクトが大きな意味を持ったのは、それに参加する国が広範だったからだ。ウクライナを支援するEUの取り組みは、戦地に接する4カ国(ポーランド、スロバキア、ハンガリー、ルーマニア)を加盟国として受け入れていなければ、はるかに弱々しいものとなっていたであろう。

 EUには、これら9カ国の加盟申請を中途半端な状態に止めておく余裕はない。それは、プーチンに欧州を不安定化させる隙を与えることになる。

 EU拡大の作業を進める上で三つ重要なことがある。第一は、加盟申請国に対して希望を持たせるメッセージを発することである。EU加盟国になるに足りる必要な改革を行った場合には、加盟を認めることをはっきりさせるべきだ。

 第二点は、EUの内部改革(拒否権の見直しや共通農業政策の改革など)を理由に、準備ができている国の加盟を遅らせるべきではない。内部改革を進めていることは、加盟申請国に対してドアを閉じる理由にならない。

 第三点は、過去の拡大から教訓を学ぶことである。多くの国の場合、EU加盟のための改革がその後も継続し、それらの国は、EU加盟後、より自由になり、更に繁栄した。しかし、EUに加盟した後、EUの規範に反する方向に進んでしまったハンガリーやポーランドのような事例もある。ガバナンスの面で好ましくない実績のある国については、よくない行いを罰する仕組みが必要である。

 欧州が世界の中で一つの勢力として数えられるためには、行動できる力を示す必要がある。拡大が困難であるからといってそれを遅らせることは、欧州とEUを弱体化させることにしかならない。


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