2023年10月9日付英フィナンシャル・タイムズ紙は、「経済が弱くても習近平は大胆になり得る」とのマット・ポッティンジャーとのインタビュー記事を紹介している。
1年前、習近平は共産党大会を支配しライバルを消していったが、現在仲間も消している。トランプ政権で国家安全保障担当次席補佐官を務めたポッティンジャーは「ブラック・ボックスだ」と言う。激動は習近平施政の特徴で不具合ではない。
権力掌握以降11年間で習は多くの党員を追放した。最新の動きは党を不安定な状況に置き自分の優越性を高めようとする積極的仕掛けの一環では無いか。一方、習近平は政治を支配しているが、調子の悪い経済と彼に反発している人民を相手にする必要もある。
中国経済減速は習近平がリスクに一層食指を伸ばすことを意味するかもしれない。未だに多くの点で優位な内に地政学上の利益を固めておこうということだ。台湾紛争防止の最良の方策は力だ。
中国は現在米国を弱いとみている。これは中国の計算違いで習近平が台湾に仕掛ければ悲惨な戦争になる。外交関係者は米中の接触増を歓迎するが、中国はハト派に敵意で反応するかもしれない。
今はデタントの時ではない。中国は譲歩しか無いと思う程追い詰められていない。弱い経済下でさえ習近平は大胆になり得る。
24年以降、米国の対中政策はどうなるか。われわれはデリスキングでなく秩序だったデカップリングを目指している。トランプは関税競争を再開し中国電気自動車が米国に輸出される可能性は無い。
中国共産党はバイデンとトランプのどちらを好むか。中国がトランプ第二期政権で一番恐れるのはトランプがウクライナ、北大西洋条約機構(NATO)、台湾を支援することである。候補者の誰かがNATO、ウクライナ、台湾に弱い立場を示せば、一層の関税を課せられてもその候補が中国の好みだ。
貿易戦争が続いても米中は限られた分野で協力が可能と期待する向きもあるが、ポッティンジャー曰く、中国に共通利益増進という発想は無い。協力を求めれば常にそれを無関係な分野でレベレッジを得るための機会と見なす。
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上記は、ポッティンジャーへのインタビュー記事である。彼はトランプ政権下で米国政府の重要な一人であり、特に対中政策で日本に近いバランスの取れた立場を取っていたと理解する。彼の発言には示唆に富む点が多い。それを順番に取り上げていきたい。