2024年12月8日(日)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年11月6日

 フィナンシャル・タイムズ紙コメンテーターのギデオン・ラックマンが、10月13日付け同紙論説‘Western diplomats are walking an impossible tightrope with Israel’で、西側はイスラエルとの間で綱渡りの外交をしており、米欧はイスラエルを支持するとともに自制を促していると述べている。主要点は次の通り。

ハマスとの紛争中にイスラエルで犠牲になった人々を追悼するウルスラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長(左)とハイム・レゲフ駐EU・NATOイスラエル代表部大使(ロイター/アフロ)

 イスラエルがガザへの地上侵攻を準備する中、イスラエルを訪問する西側関係者や政治家(ブリンケン米国務長官、フォン・デア・ライエンEU委員長等)は、複雑で矛盾したメッセージを伝えている。彼らはハマスへ反撃しようとするイスラエルに完全な支持を表明したいが、同時にイスラエルに自制を促している。

 欧州連合(EU)は、フォン・デア・ライエンのイスラエル訪問につき、多くの市民の犠牲を招く軍事行動を支持していると受け取られるのではないかと懸念している。大規模な民族浄化の可能性を懸念するEU外交官や、国際人道法の尊重をイスラエルに求めた国連事務総長の呼びかけに賛同すべきだと述べるEU当局者もいる。

 欧州関係者は、この紛争には3つの主要な側面があると述べる。第一は、戦闘そのもの。第二は、中東地域内での反応。そして第三は、西洋以外の反応だ。あるEU関係者は、「われわれは、この紛争によりグローバルサウスで重い代償を支払うことになることを恐れている」と述べる。

 しかし、イスラエルが自制の呼びかけに耳を傾けるか、西側の政府も自信はない。あるEU関係者は、「イスラエルは第二次ホロコーストに等しい事態に直面しており、国家存続のために戦っている。私達の言葉は聞かないだろう」と述べた。

 欧州の関係者達は、イスラエルがガザで拘束されている人質(欧州関係者も含まれている)の命を優先することに余り関心を示さないことに驚いている。 

 中東地域全体のことも、米国の政策の重要な焦点だ。

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 西欧がイスラエルを支持すると共に自制を促すのは正しい。10月20日のバイデンとネタニヤフの電話会談につき、ホワイトハウスの公式発表は「大統領は、イスラエルの自衛の権利と国民保護の義務を再確認するとともに、ハマスが始めた紛争でガザにつかまっている文民の保護を含めて戦争法と整合的な方法で作戦することの重要性を強調した」としている。

 バイデンは、10月19日の国民向け演説で米国の9・11への対応に触れて、「自分はイスラエル政府に憤怒のために盲目にならないように伝えた」と述べた。恐らく米とイスラエルの間では、真摯な、しかし激しい議論が行われているものと思われる。


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