2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年12月20日

 最近の中国の中東地域での動き、とりわけ王毅外相の行動パターンを見れば、中国が中東地域に外交的関与を深めようとするのは予想の範囲内であり、その目的も意図も議論の余地はあまりない。イスラエル・ハマスの戦闘が、中国に外交上の機会を提供しているという上記の論評にも異論はない。

 この論評記事について議論のあるところは、2つある。

 第一は、この戦闘への外交的関与が、国際政治の舞台において中国にどの程度の政治的機会を提供することになるだろうかという分析である。BRICS加盟諸国をはじめ国際場裡で徐々に発言力を強めつつある途上諸国の今後の外交姿勢に、中国が一層の重みを加える可能性は想定しておく必要があるように感じられる。

中東にとっても便利な中国

 第二は、中国の中東諸国への関与については、この論評が指摘する通り、具体的にイスラエル・ハマス戦闘を停止に導くほどの十分な外交的資源はないかもしれない。しかし、中国は、中東諸国への関与を今後も強める資源を多く持っている。

 中国は、石油の大口輸入国であり、脱石油や陸海空の交通網のインフラ整備を可能とする大きな資金支援や技術支援のできる国である。さらに、原子力発電の設備や技術の供与の能力もあり、宇宙開発における技術の供与についても中東諸国からの期待に応えることができるように思われる。米国との対比においては、人権問題で煩くない中国への期待は中東諸国の側に膨らんでいるであろう。

 中国が、米国を「世界のホットスポットにおける戦争挑発国だ」と批判する背景には、台湾に対する米国の支援をけん制する狙いもあろう。イスラエルとハマスとの戦闘を機会に、米国に世界の多くの諸国の批判が行くことを、中国外交が暗に欲していてもおかしくない。

 来年1月13日の台湾総統選挙を控え、中国は、中東や世界の混乱を利用しながら、虎視眈々と東アジアの勢力範囲を広げようとするだろう。

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