2024年11月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2023年12月20日

 2023年11月21日付のウォールストリート・ジャーナル紙は、イスラエルとハマスとの紛争に関して、イスラエル支持一辺倒の米国とは違って、中国は、平和創設国家というイメージ作りをアピールしているというWong Chun Han(王春翰)記者の論評を掲載している。

2023年11月に行われたBRICS招待国首脳の臨時合同会議で演説する中国の習近平国家主席(新華社/アフロ)

 米国の中東への関与政策とは対照的に、習近平は、ガザ紛争の機会を利用し、中国こそイスラム世界に対する安定勢力なのだというイメージ作りをしている。ここ数週間、中国はイスラエル・ガザ戦争の停戦を求める語気を強めてきているが、停戦達成に向けた実質的な提案はほとんどない。

 習近平は、新興5カ国(BRICS)諸国との会議で、イスラエルに対し、ガザ地区の人々への封鎖と「集団処罰」の中止を求め、パレスチナ独立国家の建設を主張した。中国のガザ問題をめぐる外交の活発化は、イスラエル人とパレスチナ人の長年にわたる紛争解決に実質的な進展をもたらすというより、責任ある世界大国だというイメージ作りを目的としていると中国の専門家はみている。

 ハマスが10月7日にイスラエル南部への攻撃を開始して以来、中国当局は繰り返し即時停戦を主張し、パレスチナ国家樹立への支持を表明する一方、中国国営メディアは、イスラエル側に偏向して中東に干渉していると、米国を非難している。

 米国は、イスラエルがハマスを倒すのを支援してはきたが、民間人の犠牲を最小限に抑え、ガザ地区の人々に人道支援が届くよう戦闘を一時停止することを含め、イスラエルに自制を求めてきた。一方、中国は近年、イスラム世界への関与を強めてきており、新疆ウイグル自治区において、イスラム教徒のウイグル族を強制的に同化させようとする政策への国際的批判を和らげようと、中東諸国への外交関係を強化してきた。

 王毅外相は、「イスラエルはガザ住民への集団処罰を止め、より広範な人道的災害を防ぐためにできるだけ早く人道回廊を開くべきだ」と述べた。中国は、国連などでのガザに関する声明で、ハマスを非難することを好む米国とは対照的に、民間人に対する暴力を広く非難する一方、10月7日の攻撃についてはハマスを直接非難することを避けている。

 *   *   *


新着記事

»もっと見る