かかる状況下、現時点で予想される24年のCFベース経常収支は「22年や23年よりは改善」が濃厚で、どちらかと言えば、方向感に欠く着地も考えられる。結果、円相場に対する説明力は従前よりは弱まる可能性がある。必然的に残る金利要因の説明力が上がりやすく、この点が円高を示唆しそうなことは周知の通りだ。
24年は「主戦場の変化」を痛感する年に
結論から言えば、24年のドル/円相場は「金利も需給も22~23年と比較すれば円高圧力は強まる」というのが合理的な予想になる。今回、金利については多くを論じなかったが、当然、世界の資本コストであるフェデラルファンド(FF)金利の引き下げが見えてくれば、為替に限らずさまざまな資産価格が逆回転を強いられる。株売りは株買いに、債券売りは債券買いに、そしてドル買いはドル売りに流れが変わる契機になる。
変動為替相場の世界に所属している以上、過去2年で一方的に嫌われてきた円もそれは例外ではなく、相応の買戻しは期待できる。為替は「相手がある話」とよく言われるが、その「相手」とは基本的にドルを指す。
だが、その影響度合いは各国の抱える需給構造で当然変わってくる。筆者は近年の日本はこの点に関しては無視できない脆弱性を抱え始めているように感じている。
確かに、日米金利差縮小や需給改善はどちらかと言えば円高方向を支持するものだろう。しかし、厳密にいうなれば、24年の円相場は「円高は不可避だが、深刻ではない」もしくは「過度な円安」が「穏当な円安」になる程度の認識にとどめておけば良いのではないかと思う。
これをレンジに落とし込むと、せいぜい130~145円程度だろうか。方向としては確かに円高だが、今次円安局面の起点(113円付近)を思えば、円高と呼ぶには抵抗感を覚えるものだろう。
24年はドル/円相場の主戦場が「100~120円」から「120~140円」ないし「125~145円」に変化したのかどうかを確認するのではないか。「米国が利下げしてもこの程度しか円高にならない……」といった現実を知るとすれば、日本経済にとって決して前向きな話ではないが、新しい発見ではある。